徒然想 連載279 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
六月はすでに仲夏の時候で、今月の異名に「月見ず月」・「五月雨月」があります。
今月は、「鳥獣を籠に入れ、つなぎ苦しめて、目をよろこぶこと、彼が心を知らざる故なり。野山を思う愁(うれ)い切なるべし。心ある人これをあわれまざらんや」です。
出典は、江戸、鈴木正三(しょうさん)著『盲安杖(もうあんじょう)』。
意は、人間は鳥や獣を籠に入れたり、つないだりして、苦しめて楽しんでいるが、そのことは彼らの心を知らないからである。鳥や獣は野山に帰りたいと思う気持ちでいっぱいでしょう。心ある人は、これを憐れまないで、いられようか、です。
『盲安杖』は、師が一般の人々を安寧の世界に導くための杖、という意味から名づけられた処世の信条十ヶ条を書いたものです。
世界の支配者であるがごとく人間は振る舞い、自然や動物たちをも我がもののようにとり扱ってしまいます。鳥や動物にしろすべての生命(いのち)あるものを、人間のわがままのままに、犠牲にしてはいけません。人は弱い者へのいたわりの心を常に忘れずに持ち続けたいものです。
美しい自然の破壊や公害の状況の日々の中で、冒頭の文言は私達の日常の心の有り様を私たちに教えています。慈悲の心として・・・。
桃蹊庵主 合掌
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