徒然想 連載283 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、災難(さいなん)に逢う時節には災難に逢うがよく候(そうろう)、死ぬる時節には死ぬがよく候、これはこれ災難をのがるる妙法にて候、です。
出典は、江戸、良寛が俳人、山田杜皋(とこう)にあてた手紙です。
意は、災難に逢ったら、それから逃げ出そうとせずに、災難に直面するがいい、死ぬ時がきたら、ジタバタせずに死ぬ覚悟をするがいい。これこそが災難を逃れる巧妙な手段です、ということです。
良寛が住んでいた地で大きな地震がありました。大変な被害があり、安否を気遣う友人からの便りに対する返事です。その内容が良寛らしい文面と厳しい仏教者としての人生観があふれています。
死や災難が自分の目の前に襲って来た時に「ああしておけばよかった」と過去を振り返って愚痴を言ってもしかたありません。「こうなってくれないか」といたずらに未来を夢みてもしかたありません。
師は喩します。「この、ただ今を自分が生き抜かなければならない、覚悟せよ」と。
自分のおかれた現状をあるがままに知り、その事実を受け取り、その上でさらなる努力を続けよ、そこから前向きの積極的な生き方が開けていく、と教えています。
桃蹊庵主 合掌
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