徒然想 連載290 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、春は花さき、秋は菓(このみ)なる、夏は暖(あたた)かに、冬は冷たし。時のしからしむに有ずや、です。
出典は鎌倉、日蓮著『報恩抄(ほうおんじょう)』。
意は、春には花が咲きみだれ、秋には果実が実り、夏は暑く、冬は寒い。これらはすべて時の移り変わりによるものではないか、ということです。
「報恩抄」は、師が出家得道の恩師「道善房(どうぜんぼう)」追悼の為に著した書物で、冒頭の文言はその一節です。
時の流れは人間の行為などを超えて一瞬もとどまることなく移り過ぎていく。誰が教えた理由(わけ)ではないが、春がめぐれば花が咲き、秋には果実が実り、夏には猛暑となり、冬には雪が降り寒くなる。四季折々の風物を織りなして自然は変わりゆく。
このような季節の訪れのように、佛は私たちの側(そば)に寄り添い慈悲の手を差しのべているのですと、師は説く。
佛の慈悲はいっそう深く私たち人間の全身を包みこんでくれるとも教え、私たちが気づくと気づかざることにかかわらず、佛はいつも人々と共にあり、その心の変化に応じて、救いの手を差しのべていると、諭(さと)している。
桃蹊庵主 合掌
|
|
<PR>