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大和 コラム

公開日:2023.03.10

徒然想 連載300
花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄

 弥生(やよい)の月は、所有(しょう)を布施すれば当(まさ)に願うべし、衆生は福を興し乏しきを救い慳貪(けんどん)に堕(だ)すること莫(な)からんと、です。

 出典は、インド、大乗経典『菩薩本業経(ぼさつほんぎょうきょう)』です。

 意は、人に所有物を布施するときは、こう願うべきです。人々は富を得、さらに貧しき人々を救い、ものおしみや貪りの心がなくなるようにと、です。

 これは出家せずに日常の社会生活を営みながら、しかも仏の教えを篤く信仰し、仏教の真理を学び続けて精進し、日常生活のあらゆる面で慈悲の行為を行い続ける人の生き方の一面について述べたものです。

 この見出しの文言は、菩薩の数多くの請願の一つですが、自己の所有欲、報着心を捨て、持てる財を人々に分かち与え、その事で人々が富を得、それが貧困家庭の救済となるよう、ものおしみや貪りの心をなくすことを願っています。

 この菩薩の立場からの布施行が、単に人に物を恵む行為でなく、自己の宗教的人格完成の願いと、人々の真の幸福を願い祈る心とが一体となった崇高な行為になっていくと、諭しています。

桃蹊庵主 合掌

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