徒然想 連載311 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
この月は、寒明けがあり、立春が月初めにありますが、寒気は一年中で最も厳しい。
本月は、栴檀(せんだん)の林に入って一枝も攀(よ)じず。崑崙山(こんろんざん)に陟(のぼ)って片玉(かたぎょく)をも取らざるがごとし、です。
出典は平安代、『勧心略要集(かんじんりゃくようしゅう』源信著(不明)。
意は、香しい香木である栴檀の林に入りながら木に登り、枝を取ろうとすらしない。宝玉が無尽蔵だという崑崙山へ登りながら、その一かけらも拾ってこようとしない。絶好のチャンスを逃している、ということです。
人間として生まれ仏法に出合うチャンスを得た者が、いたずらに欲などに惑わされ空しく人生を送り、仏法を自分のものとせず、苦しみの多い世界に生きてはならないという戒めのことばです。
香しい香木の林に入れば、一枝でもその香木を手折ってこようとするでしょうし、また宝玉を取って帰ってくることでしょう。
私達は人間として生まれたことに感謝し、その上で佛の教えに今遭っているのです。しかし、そのことに気が付かずに仏法を身につけない法があるのかと、師は私達に分かり易い喩えで教えているのです。
桃蹊庵主 合掌
|
<PR>
|
|
<PR>