10月6日に「第四十二回発表会」を開催した綾瀬邦楽舞踊連盟の会長を務める 高橋 サチ子さん 綾瀬市早川在住 83歳
みんなのために舞う
○…綾瀬の伝統舞踊が一堂に集まる発表会で、長く運営に携わってきた。活動の課題は、若手の仲間をいかに増やすか。「振付を学ぶと姿勢も頭の動きも良くなるし、息も切れない。ものすごくいいの」と熱心だ。舞台に立ち続けるためには普通の生活をしていてはダメという。寝る前も腹筋や背筋、腕立て伏せと自分に厳しい。
○…生まれ育ちもずっと早川。茅葺き屋根の家で育ち、小さいころに着ていた半纏(はんてん)が、温かかった記憶がある。それは蚕から育て、つむいだ糸で機織りし、縫ってもらった一着。子育てがひと段落したころに「もっと着物について学びたい」と、専門学校に通い始めた。着付けから反物の産地、季節の柄などを体系的に学び、その後は美容室で着付けの仕事を続けた。成人式の忙しさが懐かしい。
○…30代の頃に婦人会で盆踊りを始めたのがきっかけで、新日本舞踊の世界に入った。「祖父の唄う浄瑠璃を聴いて育ちました。血を受け継いでいるんでしょう」。今も都内まで講習に通い、みずから立ち上げた「こすもす会」で指導している。すぐ「教えられているのは自分」と付け加えた。立ち振る舞いが凛とした90歳代の仲間や、家族を亡くした後も稽古に復帰してくれた友がいる。「みんながいなければ今の私はいない」
○…68歳の時にすい臓がんと告知された。幸い早期発見で「生徒のためにもグズグズしていられない」と自分に言い聞かせた。家族を心配させないよう隠していたが、手術直前に知った夫・忠一さんは仰天した。退院して舞台にも復帰、この発表会でも客席で楽しそうに撮影していたのが忠一さんだった。「本当の夫婦になるのは60歳を過ぎてからよ」。磨き続ける人の言葉は、奥深い。
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