2012年7月に東日本大震災の被災地・宮城県気仙沼市にボランティアとして初めて赴いて以来およそ10年通い続けている家族がいる。厚木市栄町在住の二宮知子さん(53・母)、望胡(みこ)さん(24・次女)、駒音(こと)さん(21・三女)だ。
3人でボランティアとして初めて気仙沼を訪れた日のおよそ3カ月前、家族は事故で父親を亡くしていた。「ボランティアだったらお父さんも許してくれるんじゃない?」。本来であれば喪に服す期間だが、発災直後に現地の被災状況を目の当たりにしていた経験から、「誰かのために何かできれば」と一念発起して気仙沼に向かった。
最初に行ったのは、泥まみれになった写真の洗浄。発災から1年以上経っていた当時も各地からたくさんの写真やアルバムが寄せられていたという。高校生だった望胡さんと中学生だった駒音さんは、「昔の写真とかプリクラ帳とか色んな写真がたくさんあった。自分に置き換えて考えて、自分ちのアルバムがこうなっちゃうのか…と考えた」と振り返り、知子さんは「洗浄が終わっているけど長い間誰も取りに来ていないものなんかもあったりして」と身につまされる思いをした。報道では伝えられていない被災地の様々な話も聞いた。それでも3人はその後も娘2人の学校が休みになる度に気仙沼に通い、地元の人と交流するように。看護師である知子さんは個人的に仮設住宅での健康相談を頼まれたり、3人で手作りのクリスマス会を企画したりもした。毎年3月11日に行われる海岸での一斉捜索にも参加した。毎回宿泊する宿「若芽」の主人や、すし店「あさひ鮨」の店主とは親戚のような関係になった。「今はもう”帰る”感じ」と駒音さんは語る。
「自分は幸せなほうだと思えて、前を向けた」。父親を亡くしてすぐだった2人に、地元の人たちは「お母さん大切にしなよ」などと優しく声をかけてくれた。「こちらが勇気を与えないといけないのに」。
今年6月、駒音さんは聖火ランナーとして被災地を走った。「ありがとう」を地元の人に伝えたいと応募し、叶った。「コロナが落ち着いたらまた気仙沼に行って、みんなに会いたい」
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