3年間の野球生活の中でもあの試合はやはり特別だ。
11年前の夏の全国大会。初出場で挑んだ三浦学苑軟式野球部は、1・2回戦をドラマチックなサヨナラ勝ち。試合を重ねるごとに成長を遂げ、決勝に駒を進めた。エースとしてマウンドに立った準決勝の最終回。「相手打者を3者連続三振で締めて気分は最高潮。自分もチームも勢いに乗っていた」
だが、激闘の末に手にした大舞台は予想だにしない事態となる。もうひとつの準決勝、中京(岐阜)と崇徳(広島)の試合は延長につぐ延長。3度のサスペンデットゲーム(一時停止試合)を経て延長50回でようやく決着が着いた。すべての回を一人で投げ抜いた中京の投手に注目が集まる異例の状況。球場にマスコミも大挙として押し寄せ、多くの視線は中京に注がれた。
「3日間待たされて、モチベーションは下がる一方。平常心を保つために周囲の雑音を遮断して、試合に挑んだことを記憶している」。当時、チームのマネージャーを務めていた妻の育美さんは、見ず知らずの観客から「勝って当たり前だろ」と心無い言葉を浴びせられるなど、不利な状況は明らかだった。試合は5回まで0―0。ところが、ツーアウト3塁の場面で痛恨のワイルドピッチ。先制を許すと次の回にも1点を献上してしまい、0─2で全国優勝を逃した。準優勝のメダルを下げ、グラウンドを行進する写真があるが、誰も笑顔を見せていない。「嬉しくも悲しくもない不思議な気分。当時のチームメイトと集まるといつもこの試合のことが話題にのぼる」
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社会人になった今も草野球チームでプレーを続けている。週末の大半を練習と試合に費やす日々。肉体改造で身体も大きくなった。
「あの夏の悔しさが、今も本気で野球に向き合う原動力になっているのだと思う」と育美さん。「ただ好きなだけ」と本人は否定するが、勝利へのこだわりを今も持ち続けている。
![]() 体重と筋量を増した
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