現代美術家で、横須賀美術館の企画展「ミニマリズムのゆくえ」に出品する 倉重 光則さん 74歳
過去と交差し生まれる芸術
○…1968年に初の個展を開催以降、写真や映像、パフォーマンスなど創作活動は多岐にわたり、とりわけ青いネオン管や蛍光灯を用いたアート表現が代名詞になっている。近年では、過去に発表したインスタレーションを再構築し、新しさと連続性の二面性を持つ作品を、三浦市内のアトリエで制作。このほど横須賀美術館で始まった「ミニマリズムのゆくえ」でも多数披露する。
○…福岡県久留米市生まれ。少年時代の遊び場は近所の酒蔵だった。四角い窓から差し込む光を頼りにメンコ遊びに興じていた空間には、地元出身の著名画家・坂本繁二郎や青木繁作品が展示されており、この頃の日常が美術作家人生の原体験だ。絵を描くことが好きで、家業を継がせたい両親に頼み込み、唯一受験した日大芸術学部に合格。上京を果たした。
○…昨年6月、国内外の現代美術家との5人展をアトリエで開き、盛況のうちに幕を下ろした。異なる表現方法を持つ作家が1つの空間を共有して、互いに作用し合う面白さを見せた。駆け出しの頃の作品は「自分の中のイメージの再現であり、それはアートではなかった」と回顧。葛藤で絵が描けなくなりながらも、新たな自分の模索を続けていった。
○…人生の晩年に過去と対話し、振り返ることが前進する力になる―。かつて、作家の五木寛之氏の対談を見て感銘を受けた。自身もいつか来る終末を意識するようになり、アーティストとして歩んできた50年以上の時間を作品を通して見つめ直し始めたという。今夏には、同じ時代を生きてきた仲間の訃報に接し、ことさら思いは強い。ゆくゆくは一冊にまとめたいと青写真を描く一方で、ここが終わりではなく「これからの分岐点になる」と前を見つめる。
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