｢気が利く存在でありたい｣

　○…横須賀法人会青年部会が実施した「ふるさと納税」返礼品の新商品アイデアコンテストで三浦市長賞に選ばれた。考案したのは、廃棄される三浦産キャベツの外葉を使ったシューアイス「ｃｈｏｕ ｃｈｏｕ」。市内から11件の応募が寄せられた中、高評価を獲得した。「地元の魅力と日本料理の技が詰まった一品がＰＲできて嬉しい」

　○…海を間近に臨む三浦海岸で、４人きょうだいの３番目として生まれ育った。中学時代、父に連れられたフグ屋で、店主が席まで来て挨拶する姿に憧れを抱き、17歳で料理人の道へ。「辛くて逃げ出したこともあった。でも中途半端な人間にだけはなりたくなかった」。和食店で修業を積み、29歳で実家の葬儀会社(有)金子慈光堂の仕出し事業として、(有)じこうを設立。その後、新鮮な食材をカジュアルに味わってもらおうと、２０１０年11月には入江に拠点を移し、日本料理「慈こう」と味の旬彩「てん心」をオープンした。

　○…店の経営が軌道に乗り始めた矢先、コロナショックが襲った。「毎日頭を抱えていたが、職人としての自分を見つめ直すきっかけにもなった」。三浦半島で釣った魚を下処理し、梱包配送するサービス「魚楽便」を３年前から開始。観光客や地元客から人気を博している。「『もっと店を繁盛させたい』という気持ちから『お客様に感動してほしい』という考えに変わった。ｃｈｏｕ ｃｈｏｕもその一つ」

　○…プライベートでも食べることが好きで、名店の味を求めて遠出することも。「店の悪いところではなく、良いところだけ見ている」と職人一筋の人生を歩んできた中で得た独自の流儀がある。「目配り、気配り、心配りが、さらに料理を引き立たせる。気が利く存在になれれば幸い」