逗子・葉山 人物風土記
公開日:2023.08.04
逗子市被爆者の会(つばきの会)で語り部として証言授業を続ける
宮川 千恵子さん
逗子市池子在住 89歳
伝えたい思い、言葉に込め
○…逗子市に被爆者の会ができた1988年当時は、会で一番若い49歳だった。ピーク時には70人いた会員も現在は約10人。被爆体験を記憶を持って語れる唯一の存在となったいま、「先輩たちがやってきた活動をできる限り続けていかなければならない」と強く責任を感じている。
○…広島県出身。11歳の時に爆心地から8〜9キロメートル離れた疎開先で被爆。両親、2人の兄とも奇跡的に生き延びたが、父は3年後に原爆症で他界。中学、高校時代は親戚の援助を受け、後に元軍医だった母の再婚相手の養女となった。「(経済的には)被爆者としては恵まれた境遇だったが、気持ち的には忍耐の時代だった」という。養父への恩返しのつもりで神戸女子薬科大学に進学。「広島を離れた時はほっとした」と当時の心境を振り返る。
○…25歳で結婚。約50年前に逗子に移住してきた。「物価は高いけど、空気がいいから長生きしたわ」と笑う。3人の子どもたちには、養父が亡くなるまで、被爆者の父の事を話せずにいた。自身も49歳ではじめて被爆者手帳を手にした。被爆者の会ができてからは、証言集、詩画集づくりや、経理として会を支え、語り部としての活動は80歳から。「小中学生にどう話せばわかりやすいか常に考えている」と準備に余念がない。
○…80歳まで薬剤師として現役を続けた。「引退後は習字をやりたいと思っていたけど、語り部になってその時間もない」と忙しい日々を過ごす。会員の高齢化が進み、いつかは会は無くなる。しかし「被爆体験を語り継ぐ活動は絶やしてはならない」と、若い世代への継承も視野に入れる。「絵や活字では思いは伝えきれない。やはり言葉が大事なんです」と力を込めた。
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