藤沢 社会
公開日:2020.03.06
CD復刻盤を作成
東京大空襲 音楽に鎮魂込め
ハープ奏者・八木さん
75年前、およそ10万人が犠牲になったとされる東京大空襲。戦禍で肉親を亡くした父の遺志を継ぎ、毎年空襲のあった3月10日に合わせて鎮魂の演奏を行っている音楽家がいる。片瀬在住の八木健一さん(63)と妻のゆみ子さん。今年はオリジナル曲を収録したCDの復刻版を作成した。
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当時20歳だった健一さんの父、康二さんは1945年3月10日の未明、深川区(現・江東区)の自宅で大空襲に遭った。降り注ぐ焼夷弾と火の手を避けながら、5歳の弟をおぶって逃げ回ったが、明け方になり、気が付くと背中の弟はすでに冷たくなっていた。自身も深い火傷を負ったが一命は取り留めた。
戦後、藤沢に引っ越した後、康二さんは近所の子どもたちを集めて素話をするほどの話好きだったが、戦争のことはほとんど語ることはなかったという。2006年3月に亡くなった後、遺品の中から戦争の悲惨さをつづった書面が見つかり、「弟をきちんと埋葬できなかったことが心の傷になっているようだった」と健一さん。02年に東京大空襲・戦災資料センター=同区=ができてからは、毎年3月10日に欠かさず足を運んだ。
戦禍の記憶、後世に
康二さんが亡くなってからは健一さんがバトンを受け取った。「第2世代の僕らが記憶を繋いでいかないと。戦争の悲惨さや平和の尊さを音楽で伝えられたら」。翌07年からは毎年、同センターで演奏会を開催。ゆみ子さんが空襲の激しさを表現した「寒い夜に」と犠牲者への鎮魂曲「祈り・光へ」のオリジナル2曲を作曲し、翌年CDも作成した。
今年の演奏会は新型コロナウイルスの影響で中止になったが、3月10日に合わせてCDの復刻版を作成。夫妻は「平和は当たり前にあるものではなく、父が経験したような犠牲の上に成り立つもの。戦争を体験した人たちに寄り添いながら、東京大空襲の事実を後世に伝えたい」と話した。
CDは税抜1500円。3月10日にインターネット通販サイトのAmazonで販売予定。
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