江の島の主要観光施設となっている「サムエル・コッキング苑」について、藤沢市は今年度、敷地内にある温室遺構を活用した再整備事業に着手する。かつて東洋一の規模を誇った遺構が常時鑑賞できる建物を新設。ポストコロナを見据え、日中の観光需要喚起に役立てる。一部リニューアルは11月を予定。
同苑前身の庭園は、英国の貿易商、サムエル・コッキングが私財を投じて1885(明治18)年に完成。温室遺構は2002年の改修工事の際に発見されたもので、基礎部分のほか、地下貯水槽などが残る。市観光シティプロモーション課によると、レンガ造りの温室遺構としては現存する唯一のものという。
再整備にあたり、市と運営者の江ノ島電鉄は文化遺産としての価値が高く、入口近くにある同遺構に着目。雨風に晒される遺構の保存も兼ね、遺構上部に全面ガラス張りの建物を新設することにした。
建物は高さ約5・5m、延べ床面積約50平方メートルの平屋建て。室内には観葉植物を配置し、植物園の関連施設として演出するほか、床は強化ガラスになっており、「遺構の上を空中散歩しているような」(同課)仕組みに。また地下にはカメラを設置し、貯水槽などの様子をモニターに映し出す。
市は整備費として21年度当初予算案に約8600万円を計上。2カ年事業で、来年度には文化交流や体験ができる多目的施設を建設するほか、植物案内板や遊具コーナーなども整備する。
再整備を巡って市は「通年型観光」を掲げ、イルミネーションなどを機軸にした夜間観光振興に注力。一方で植物園としての由来周知や日中の観光需要などに課題があった。同課では「体験型の観光を充実させることで滞在時間が伸び、経済効果にも期待ができる。ポストコロナに向けて観光の起爆剤にしていきたい」としている。
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