藤沢 人物風土記
公開日:2023.04.07
彫刻家で藤沢市へ29点の美術作品を寄贈し、文化振興基金へ寄付した
熊坂 兌子(なおこ)さん
鎌倉市在住 90歳
世の中を良く見てやろう
○…「文化、美術を後世へ。藤沢にミュージアムを」。かつて幻となった活動に込めた思いを、未来に託す意味も込めて作品を寄贈した。自身と亡き夫サール・シュワルツ氏の魂のこもる彫刻など29点。奥田公園の「平和の母子像」や長久保公園にあるサール氏の「デミター」などパブリックアート作品の老朽化も解消したいと文化基金へも寄付。「今ある美術品をケアして、長い間楽しんでもらわなくちゃ」。願いはシンプルだ。
○…7歳から藤沢で育ち戦中を経験。東京藝大で彫刻を学び、藤沢高校で美術を教えた。36歳の時「世界を見たい」の一心で単身渡米。ニューヨークで活動しサール氏と出会い、1978年に結婚。帰国後朝日町にアトリエを構え、鎌倉に拠点を移しイタリア・ヴェローナと行き来し互いに創作を続けた。
○…トレードマークはベレー帽。数十年前、愛し愛されともに歩んだサール氏から贈られた物だ。「アーティストっぽいでしょ。くせ毛だからさ」とはにかむ。「サールは世界中を見せてくれた」と、二人で世界の市井を旅した日々を懐かしむ。「家族、日々の暮らし。大切にしているのは世界中どこも皆同じだった」。だから思う。「今の日本や世界情勢がこのままでいいはずがない」
○…80歳まではドリルを手に、戦中体験がモチーフという「母なる大地の怒りや嘆き」をイメージした母体像を中心に大理石彫刻を手掛けた。「作ってやろうって思いでね」。たぎっていた創作への炎は「落ち着いてきた」と言うが、90歳の今もキッチンの傍には制作中のコラージュが。日課は庭の椿や雲の形を眺め、友人の絵の鑑賞に出かけること。「世の中を良く見てやろうってね」。美術を通した鋭い目線は変わらない。
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