藤沢 人物風土記
公開日:2025.05.09
用田にある古民家の活用法を考えるイベントを企画する
片岡 侑史さん
亀井野在住 42歳
人集う”第4の居場所”に
○…目指すイメージは「地域をつなぐハブ」だ。医師として働く職場に隣接する畑の所有者が亡くなり、明治期に建てられた近くの民家の行く末が気になった。「思い出が失われてしまう」。その娘から相談され、土地ごと譲り受けた。友人と手弁当で改修を重ね、地域一体で活用法を考えることにした。「住民が自然に足を運び、緩やかな交流が生まれれば」
○…緑が生い茂るエリアにぽつんとある建物。年季の入った柱、薪ストーブ。まるで診療所とは思えない佇まい。病院勤務医時代、あらゆる病気の診断と治療にあたる総合診療に携わった。救急外来や緩和ケアにも。診断はつくが、もはや治療できる状況にない多くの患者と接してきた。難病や金銭的な問題など原因は人ぞれぞれ。自問自答を繰り返す中で、「病院の医療だけでは限界がある」という思いが募った。そのうち介護や福祉、在宅医療の領域を知り、2018年に開業。誰もが訪れやすい雰囲気づくりを心掛けている。
○…「常に味方でいること」がモットー。「人は希望がないと孤立し、絶望する。せめて敵にならないこと」とつけ加える。便利な世の中だからこそ効率化を求められ、生きづらさを感じる人は多い。「SNSがいい例。承認欲求が歪んでいく。義務や強制力があると人間関係は続きにくい。弾かれる人も」。古民家が社会課題解決の糸口となり、家や病院、施設に属さない”第4の居場所”を視野に入れる。
○…農業は生活の欠かせない一部だ。物々交換で生まれる温かな交流。年の差は関係なく、古き良き日本の暮らしぶりを体現する。生後7カ月の娘の頬をなで「愛着と誇りを持ち豊かに過ごせる未来になれば」と願う。夢はこの地で少しずつ実を結ぼうとしている。
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