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藤沢 トップニュース経済

公開日:2025.09.05

藤沢本町駅近ビール醸造所
障害者雇用視野に開店
大浦さん 会社員と“二刀流”

  • カウンターからクラフトビールを差し出す大浦さん

 クラフトビール醸造所「オーラブルーイング」が先月上旬、藤沢本町駅近くにオープンした。店主は、人材サービス会社に勤務する大浦真琴さん(48・西富在住)が務める。会社員と醸造家の"二刀流"。現在、重度の知的障害のある人らが働ける環境を整備している最中だ。

 一定規模の企業に義務づけられる障害者雇用率(法定雇用率)は2024年から2・5%に引き上げられ、障害者雇用は企業経営者の間で関心が高まっている。民間企業は特例子会社を設置でき、ここで雇用する障害者を企業のグループ全体として雇用率にカウントできる制度がある。

 大浦さんは特例子会社のマネジメントを行う中で、重度知的障害者を雇用する難しさを感じていた。「個人で雇える場を作れないか」。いつしかそんな思いが芽生えた。

 もともとビール好きだったという大浦さん。あるクラフトビールを口にした時、独創的な味に魅了された。「ビールなら醸造過程で雇用の幅も広がるはず」と思い立ち、クラフトビール醸造所を作ることを決めた。

「石見式」を採用

 しかし、高額な大型タンクを用意しなければならない。動画サイトなどで調べる中で「石見式」と呼ばれる醸造法を知った。島根県江津市にある醸造所「石見麦酒」発祥の業務用冷蔵庫とビニール袋を使用するスタイルで、初期投資も少ない。会社の休日に現地に足を運び、4カ月ほど修業を積んだ。

 クラフトビールは一般的に大型タンクで300〜400リットル単位で仕込むが、石見式は50〜150リットル。小回りが利くため季節限定品や飲食店、一般消費者からオリジナル品の注文も可能だ。醸造の他、瓶詰めやラベル貼りの工程も障害者雇用につながると確信した。

 もともとは老夫婦が営んでいた鮮魚店を改装。ガラス越しに醸造工程が見られ、タップルームも設けた。

 藤沢13地区をイメージしたビールを作る想定で、例えば「片瀬」は癖のないスッキリとした味わいで爽やかさを、「藤沢」はアルコール度数7・2%、苦みも強いガツンとした濃さを、「長後」はチョコレートモルトの香りや甘みを感じる秋の枯草を表現した。

 地産地消やフードロス削減にもこだわり、今後は市内の庭になる柿など放置果樹を格安で購入、使用したい考えだ。

 企業理念は「クラフトビールで地域を元気に、笑顔を世界に」。大浦さんの親戚の一人も重度知的障害のある一人で、「1年後には雇用したい。障害者の親や周りの人が勇気を出して起業できるロールモデルとなり、それが世界に広がっていけば」と展望を語った。

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