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公開日:2015.06.26

東慶寺
所蔵資料を「記憶遺産」申請
17年の登録目指す

  • 保管されていた離縁状の写し。卯年(1855年)の9月6日に見治郎としんの離縁が認められたことが記されている。この離縁については8月28日に駆け込みがあり、9月8日に下山したと記録が残っている(上)、「花の寺」としても知られる東慶寺

 江戸幕府公認の「縁切り寺」として知られる市内山ノ内の東慶寺は6月16日、所蔵する「東慶寺文書」の世界記憶遺産への登録を目指して、日本ユネスコ国内委員会に申請を行った。同寺の井上陽司住職は「当時の女性の人権保護に関する貴重な資料なので、登録が多くの人に知ってもらうきっかけになれば」と話している。

 世界記憶遺産は古文書や書籍、音楽といった歴史的記録物について最新デジタル技術を用いて保全し、広く公開することを目的にユネスコが1992年に始めた事業。

 同寺が申請したのは、2017年の登録を目指すもので、国内では16件の応募があった。

 同寺が所蔵する「東慶寺文書」は、離縁状や妻の身元を明らかにする着届といった古文書773通20冊からなり、そのほとんどが縁切り関係の文書という。2001年6月には国の重要文化財に指定されている。

女性人権の貴重な資料

 妻から離婚の請求ができなかった江戸時代、同寺は幕府公認のもと、夫の不法に泣く女性を救済して離婚を成立させる「縁切り寺」「駆け込み寺」として知られていた。

 男女の離縁を支援するアジール(避難所)は世界各地に記録があるが、寺院・教会といった宗教的権威が離婚を申し付けることがほとんど。国家権力が離婚を認定する制度は、世界的にも珍しいと言われている。

 「縁切り寺」として認められていたのは同寺と群馬県・満徳寺の2カ所だったが、明治時代に満徳寺が廃寺となったため、現存するのは同寺のみとなっている。

 近年、「前近代社会における庶民女性の人権保護に関する記録」として国内外の研究者から関心が高まっていることを受け、同寺は「東慶寺文書」を世界記憶遺産に登録申請することを決めたという。井上住職は「たった2カ所しかなかった『縁切り寺』の貴重な資料。登録を契機に後世に残していきたい」と話している。

 今後は9月に選考委員会が開催され、2件を選出。来年3月にユネスコへ申請し、17年夏頃に登録の可否が決定する。

同寺で公開中

 登録申請中の「東慶寺文書」などを展示する「東慶寺文書展」は、8月30日(日)まで同寺松岡宝蔵で公開されている。問合せは【電話】0467・33・5100へ。

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