逗子開成中学校・高等学校や鎌倉女学院の創立者であり、自らも漢学者・漢詩人として活躍した田辺松坡(しょうは)(1862〜1944)。その功績を再評価しようと、図書館関係者や元教諭が中心となって「松坡文庫研究会」が発足した。田辺の死後に遺族から市に寄贈された蔵書の調査・整理とともに、その足跡についての研究が進む。
田辺松坡(本名、新之助)は佐賀県出身。17歳で上京、東京大学予備門に学び私立共立学校の英語、地理教諭となった。
1897年、東京府開成尋常中学校の校長に就任。1903年には第二開成学校(現在の逗子開成中学校・高等学校)の、翌年には鎌倉女学校の設立に携わり、両校の校長となった。この頃、鎌倉に移り住んだとみられる。
自身も大正・昭和を代表する漢学者・漢詩人として多くの作品を残し、15年に鎌倉同人会が設立された際には、会の命名とともに発起趣意書を起草。同会や青年団が設置した石碑の碑文なども作成している。
また長男・元(はじめ)は哲学者に、次男・至(いたる)が画家になるなど、自らの家系からも多くの文化人を輩出した。戦後間もない1947年には、蔵書が遺族から鎌倉市に寄贈されるなど、鎌倉の文化界に多くの足跡を残した。
しかし現在の鎌倉で、田辺の名前を知る人は決して多くない。市に寄贈された約6千冊とも言われる蔵書も、まとまった「コレクション」になっていないのが現状だ。
そこで市中央図書館職員の中田孝信さん、逗子開成の元校長で同校が2003年に100周年を迎えた際、伝記『学祖田辺新之助』の編纂に携わった袴田潤一さんが中心となり、今年7月に「松坡文庫研究会」が発足し、袴田さんが代表となった。
現在は2人のほか図書館ボランティアら数人の会員が月1回程度集まって書庫を点検し、田辺の蔵書をリスト化する作業が進められている。
袴田代表は「田辺は『現代書道の父』とも言われる書家の比田井天来を斎藤茂吉に紹介するなど、文化人同士のパイプ役としての役割も果たしていた。今後1〜2年かけて寄贈された蔵書の調査を進め全容を把握するとともに、鎌倉の近代を築いた一人として田辺の生涯や功績についてもまとめ、発表していきたい」と話している。
関連イベントも
図書館祭りの一環として「田辺松坡を巡る会」が10月22日(月)、市中央図書館3階多目的室で開かれる。午後0時30分から4時30分まで。
同会の袴田代表を案内役に、妙本寺詩碑や鎌倉女学院内の胸像、十一人塚などゆかりの地を巡る。15日(土)から受付開始。
イベントの申し込み、研究会への問い合わせは市中央図書館【電話】0467・25・2611へ。
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