鎌倉市は、30年ぶりに専門職(技術職)として司書の正職員を採用し、2人の新任司書が4月から市立中央図書館で働き始めている。資料選択や読書案内などを担う司書の採用を巡っては、市民団体が「経験者がいるうちに次の人材育成が必要」と、要望書や署名、陳情を出すなど、20年にわたり訴え続けてきた経緯がある。
市は、市役所全体の職員数適正化計画の一環で、1993年を最後に30年間、専門技術職である司書の正職員採用を行ってこなかった。
専門職ではなく事務職員として、また短期的に雇用される会計年度任用職員としては司書の有資格者を採用しており、有資格者は市内各館に配属していた。
しかし、継続的かつ長期的に勤務する「正職員としての採用が必要」と20年にわたり訴えてきたのが、市民団体「図書館とともだち・鎌倉」(通称ととも)だ。「司書の力量を高めるには経験がものを言う。経験豊富な司書がいるうちに、新たな世代を時間をかけて育てる必要がある」と、前代表で元司書の和田安弘さんは話す。
とともでは、2006年から「司書資格を持つ正職員の新規採用」を求める要望書を市へ4回提出。21年9月には、鎌倉市へ3872筆の署名を提出し、10月の市議会で陳情が採択されるなど活動を進めてきた。
とともの要望などを受け市は新たに司書を採用することを決定し、昨秋の採用試験で「司書若干名」(1976年4月2日以降に生まれた人が対象)を募集した。
採用に踏み切った理由について、市の岩岡寛人教育長は「退職者の補充という意味合いもあるが、技術を継承していかなければならないと感じた」。
新任は20代、30代
採用試験を経て2人が正職員として採用され、4月に入庁。2週間の全体研修を終え、現在は中央図書館で先輩から指導を受けている。
新任のひとり木ノ戸香子さん(35)は、青森県の図書館で司書として勤務。鎌倉では正職員として雇用されることや、以前に鎌倉の図書館が子どもたちに向けSNSで発信したメッセージを見て、「司書の声を発信できることに魅力を感じた」と応募理由を語る。一方の藤井文乃さん(22)は大学で図書館学を学び、「幼少期から鎌倉に憧れがあった。市民に役立てるよう務めていきたい」と意気込む。
館長補佐の津田さほさんは「専門技術職の司書は私が採用されて以来。待望の2人です」と喜び、栗原章郎館長も「先輩が積み上げてきた技術やノウハウをつなげるためにも、大きく育ってほしい」と期待を込めた。
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