茅ヶ崎・寒川 人物風土記
公開日:2024.01.05
『茅ヶ崎の公民館づくり運動 私と社会の交差点』を出版した
西山 正子さん
赤松町在住 87歳
「誰かのため」に生きた軌跡
○…「茅ヶ崎にも生涯学習の場を」。1970年代半ば、母親たちが中心となり巻き起こった公民館建設運動で、中心的役割を担った。活動の経緯を半生とともにまとめた『茅ヶ崎の公民館づくり運動 私と社会の交差点』(旬報社)をこのほど出版。「運動のことをいつか形にしたい、と思っていたので、素直にうれしい」とほほ笑む。
○…鎌倉市出身。結婚を機に茅ヶ崎での生活が始まった。3人の子宝に恵まれたが「子育てに追われ、社会とのつながりがなくなったように感じていた」。ある日、近所の母親たちと市が主催する市民教養講座を受講しようとしたが、その間の保育を打診したところ担当者は「そんな予算はない」とにべもない返事。「誰もが学びたい時に学べる場、公民館が必要だ」と思うようになり、75年、「茅ヶ崎市に公民館をつくる会」を結成。代表に就任した。
○…「最初は陳情に行っても議員や市職員から軽く見られていると感じた」。ならばと猛勉強で「理論武装」し、先行する自治体への視察を重ねた。すると周囲の空気が変わり出す。会の結成から5年後の1980年、ついに市内初となる小和田公民館がオープンした。「多くの人と議論を重ね、それが成果になった。大変でしたが楽しかったですね」と振り返る。その後、市議会議員を3期務め、教育問題などに提言を続けた。
○…本が出版され、さまざまな反響が寄せられたが、意外だったのは身内の声。「子どもたちから『どうしてお母さんがあんなに忙しくしていたのか、やっと分かったよ』と言われました」と苦笑する。87歳となった今でも地域のケアセンターでボランティア活動を行う。「誰か」の役に立ちたい、という情熱はまだまだ衰えない。
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