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平塚・大磯・二宮・中井 人物風土記

公開日:2011.03.17

平塚市弓道協会の会長で、県内唯一の範士
宮田 融(とおる)さん
宮松町在住 78歳

「一瞬を永遠にするには」



 ○…「的に当てることに執着するから技が汚くなるし、品格もなくなる。手応えを感じた時は精神が穏やかに静まり、自分の心に向かって思わず矢が離れていくような感覚があります」。範士8段、極意の一端を表現する。範士は弓道の最高位で、形、技術、品格に優れた人に認められる。全国で約80人、県内では唯一の存在だ。片肌を脱ぎ、弓を射る所作は伝統美を映し出す。的を見つめる目は鋭くも穏やかだ。



 ○…高校の教員時代、野球部の監督をしていた。ある雨の放課後。グランドに立てない暇を 持て余し、校内の弓道場に何気なく顔を出した。「弓を貸してみろと、確か16本の矢を試してみましたが的には一本も当たらない。雨が続いていたので意地になって通っていると、弓道部の生徒から顧問になってくれと頼まれた」と、これがきっかけ。1日100本の練習を自分に課し、生徒の帰宅した暗闇の的に向かい続けた。



 ○…「真面目にやっているのに、初段になれない子がいた。それなら、自分が審査員になる立場まで上達して、努力を酌んであげればいい。何より、生徒には嘘を教えてはいけない」。当時日本弓道界の5指に数えられた範士10段、窪田真太郎氏に思い立って手紙を送り、師事することに。向島まで通い続け、真髄を学んだ。20年の顧問生活では全国大会の舞台にも生徒を導くことができた。「意地になれば出来ないことはない。審査に受かりたいではなく、受かると決める。生徒にはそれを伝えた」という。



 ○…平塚市弓道協会には昭和44年の設立当時から尽力。今も総合体育館内の弓道場で指導している。「弓道はいつまでたっても何か不足しているところがある。自分の心と見た人の心の中に残る“作品”にする、一瞬を永遠にするためにはどうすればよいのか。そんなことを考えています」。求道はまだまだ続く。

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