12年ぶりの快挙だ。小田原高校吹奏楽部が8月11日に川崎市で行われた県大会B部門で金賞を獲得。9月15日(土)に茨城県で開催される東関東吹奏楽コンクールに出場する。
演奏曲はバルトーク・ベーラ作曲『舞踏組曲』よりI・II・Ⅴ・終曲。第一次世界大戦後の混沌とした世界情勢の中で作られた。バルトーク特有の変拍子が多い曲で、今年初めに指揮者の村上信吾氏から楽譜を渡された部員は不安に駆られた。
3月の定期演奏会で初披露し、反省点を生かして練習。1年生を迎え小田高祭が閉幕した6月から追い込みが始まった。地区大会は3位。昨年より1つ順位を落とすも、先輩の多くが通過した地区を抜け一安心。しかし内心「県はどうしよう」。
昨年の県大会経験者が3人しかいないなか、1・2年33人は限られた練習に心を合わせて迎えた本番。昨年とは違う会場で音の響きにも不安があったが、本番前のチューニング室で、ある儀式が行われた。
外部指導者の裏地慎氏の「大好きって思って演奏をするんだ。聞いてくれる人、支えてくれる人に感謝を込めて」という思いから生まれた「舞踏組曲!だ〜いすき〜」という声とポーズ。いつもやってきたこのルーティーンを数々の不安を丸く包み込むかのように全員で行い舞台に上がった。
「大好きって言ってから吹くと音が明るくなるんです。あと、先輩に『県大会が一番楽しいよ』って言われて。本当に楽しかった」と笑顔の小屋怜華部長(2年)。結果発表で「金賞」という言葉に高まる心拍数から解放されワッと歓声が上がり、東関東に進める推薦団体発表時に歓喜は頂点に達した。刑部(おさかべ)菊乃副部長(同)は「初めは不安が一杯だったこの曲を東関東で演奏できる。曲への理解を深めて小田高の舞踏組曲を会場の皆様にお届けします」と話した。
2006年、東関東で金賞を獲得した当時の部長・端山(はやま)依都さん(29)も激励の言葉を寄せた。いまだに当時の仲間と会っては東関東の思い出話に花を咲かせるという端山さん。「東関東は一生の宝物になる。練習しすぎに気を付け、いろんなことがあると思うけど皆仲良く信頼しあって悔いのないよう全力で演奏してきて」とエールを送った。