寸胴鍋目一杯入った具沢山ちゃんこに、3升のご飯。おかずの野菜炒めやアジフライも桶にてんこ盛り…。目を見張るボリュームの食事を前に「いただきます」と威勢の良い声があがる。どんぶり飯片手に次々とたいらげていくのは、いまや全国や関東常連になった旭丘高、城南中の相撲部を中心とする小田原相撲連盟の子どもたちだ。
この光景は毎晩「早川漁村・あぶりや」で繰り広げられる。同連盟の田川順也会長((株)JSフードシステム社長)が「食を通じてすべての人の幸せに貢献するという理念にも通ずる」と、自社の店で食事の面倒を見るようになったのは7年程前。相洋高相撲部OBでもある同店の船木卓也さんが腕を奮っている。食材は一部差し入れもあるが、ほぼ私費で賄う。
寮生活を送る選手たちは朝5時半の弁当作りに始まり、掃除洗濯も学業と稽古の間に行っている。「稽古後は正直ドロドロ。晩御飯があるだけで本当にありがたい」とチョイジルスレン君(旭丘高3年)。疲れた身体を癒す同店は我が家、胃袋を満たす食事はまさに”おふくろの味”だ。
「食べて身体を大きくすることが仕事。単に美味しいで終わってはダメ」と船木さん。食べる量はもちろん、姿勢や箸の持ち方等の作法にも気を配る。食後の片付けは当番制で、同じ釜の飯を通し、多くの事を教えている。
モンゴルからの留学生選手たちは帰省することなく、正月も同店に通う。日頃の恩返しとばかりに、元日の朝から餅つきを手伝い、来店客らに振る舞うのが恒例行事だ。今年は60kgの餅米をつき、すっかり慣れた杵捌きを披露していた=写真下。
「強くなるだけじゃなく、どこに出ても恥ずかしくない魅力ある人間になってほしい。こっちも手抜きせず真剣勝負です」(船木さん)。今年もあたたかいご飯と眼差しで、子どもたちの活躍を後押しすることだろう。