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秦野 文化

公開日:2016.03.31

「葉書」に見立て 文字刻む
清水町在住の小宮さん

  • 小宮さんが般若心経をつづったタラヨウの葉

  • 参加者にアドバイスする小宮さん(右)

 木の葉にしたためられた、細やかな般若心経。書いたのは秦野市清水町在住の小宮卓二さん(84)。モチノキ科の常緑樹であるタラヨウの葉を「葉書」に見立て、手のひらサイズの葉に様々な文字をつづっている。

 タラヨウの別名は、「はがきの木」。葉の裏面は傷をつけると色が変わるため、文字や絵を書くことができることに由来している。

植物好きの好奇心

 小宮さんがタラヨウの葉に文字を書くようになったきっかけは、約15年前に夫婦で巡ったお遍路参り。途中で立ち寄った法起院(奈良県)の境内にタラヨウがあり、「葉書」の由来であると記されていたという。

 古代インドでは釈迦の教えを伝えるためヤシ科のタラジュの葉に書き記しており、その後中国に伝わる際にタラヨウが用いられるようになったと言われている。 若い頃から植物が好きだった小宮さんは、自生するタラヨウを手に入れさっそく自宅で挑戦した。数年後には「野生の葉は小さいから」と苗木を探し、自宅の庭に定植。本格的に制作を始めた。

 東京農業大学出身で、吉田島農林高校(当時)で教諭も務めた小宮さん。自宅の本棚には植物の図鑑や資料がずらりと並んでいる。タラヨウについても様々な文献に目を通し、試作を繰り返した。葉の表面よりも裏面の方が文字が浮き出ること、若い葉より厚みのある前年の葉が書きやすいことなど、独学で知識を深めた。「タラヨウに書いた文字は数百年も保つと言われているんですよ」と、自身でまとめた資料を眺めながら話した。

 年賀状に見立てて「あけましておめでとうございます」と書いたり、制作のきっかけが法起院だったことから写経をしたり。これまでの昨品は1枚1枚丁寧に方眼用紙に貼り、保存している。

 3月25日には、清水町の65歳以上の住民で構成する団体の集まりで、「葉書」の作り方を教えた。参加者は「いつまでも元気に長生きしますように」「いつもありがとう。これからもよろしく」など願い事や家族への思いをしたためた。

 「古代インドで用いられていたというヤシ科の葉にも書いてみたいです」。小宮さんの好奇心は、まだまだ尽きそうにない。

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