不育症に積極的な支援を 情報提供や相談体制の整備に市も前向き
子どもを授かりにくい「不妊症」は近年多く知られ、治療を行う人も増えている。横須賀市でも、相談窓口や特定不妊治療費助成制度を設けている。その一方、授かっても2回以上の流産・死産、早期新生児死亡を繰り返す症状は「不育症(ふいくしょう)」と定義されている。全国で約3万人が不育症の治療を行っているが、情報が少なく、相談体制もまだ整っていないのが現状だ。横須賀市においては昨年、市議会でも取り上げられており、行政も積極的な支援に乗り出す方向だ。
妊娠した女性が流産を経験する割合は約15%と言われている。厚生労働省の不育症研究班では、その中で2回・3回と繰り返す場合は不育症を疑い、検査・治療を行うことを勧めている。原因は、血液の凝固異常や染色体異常・甲状腺の異常、子宮の形態異常など多岐にわたっていることが近年の研究で解明しつつある。その原因にもよるが、治療をすれば約8割の人が出産可能になるという。
治療の現状は
不育症の治療に関しては、研究も進んでいるが、それをとりまく経済的・精神的な支援は遅れているのが現状だ。治療に関する情報や、相談窓口も少なく、流産を繰り返すことで受ける精神的な負担は大きい。「早く知って、治療が受けられていれば」という声も多いという。また、不育症と診断された場合の治療にも多額な出費を要する。流産を引き起こす要因のひとつ「抗リン脂質抗体症候群」に対する治療法として「ヘパリン自己注射療法」があるが、保険適応ではないため、自己負担を強いられている。大和市では昨年10月、治療費の上限30万円を助成する事業を開始したが、こうした独自の助成を行っているのは全国で16自治体にとどまる(平成24年1月現在)。治療をしながら出産にいたった場合でも、通常の2倍近くの費用を要するという。昨年末、ヘパリン注射に関しては保険が適用されることになったが、一部の症状に限るもので、大きな負担減にはつながっていないようだ。
横須賀市の動きとしては、昨年11月の市議会本会議で鈴木真智子議員(公明党)は、不育症患者の支援について吉田市長に質問。時期は特定しなかったものの「専門の医療情報や相談体制の整備を進めたい」として、妊産婦への周知のため、市のプレママ教室や母子手帳への情報の掲載や、市の不妊相談の場でも不育症についても対応できるような形を検討したいと回答している。治療の補助金導入など経済的な支援についての具体的な回答はなかったが、「これまで公的に寄り添うことができなかった。積極的に支援の手を考えたい」と話している。また、相談・支援の窓口となる市こども健康課では、こうした動きに応じて、他自治体の事例も学びながら、不育症についての講演に参加するなど、職員の研修を進めているという。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>