地元漁師ら経験いかす
「漁港の食堂」の成功などで注目を集める平塚漁業。新たな観光策によるにぎわいを目指し、平塚漁業組合らが、平塚の伝統漁「ごろびき網」の復活計画を進めている。計画の中心を担う同組合の伏黒哲司さんらの活動を追った。
約10年前、平塚の漁業活性に向けた新たな一手を考えていた伏黒さん。「地曳網を小規模で実施すれば、費用も抑えられ、イベントに幅が出るのでは」と湘南ひらつかビーチクラブの北澤浩一会長に話を持ち込むと、「それは”ごろびき網”だよ」と教えられた。
ごろびき網は小型の地曳網。地曳網の大きさは海底の形状で異なり、平塚では大体500m程度という。ごろびき網はその半分ほどの大きさで、巻取り機を使わず人力のみで引くことができる。1933年に編纂された『神奈川県平塚市漁村経済調査書』には「五呂曳」が遊船客向けに運営されていた記録が残る。しかし、魚の減少などで、人手の必要な網漁は衰退し、観光地曳網を最後まで続けていた勘四郎丸も2006年に休業してしまった。
伏黒さんは同船の松本さんに協力を依頼したが、「簡単じゃない」と諭され、一旦は計画の中止を決めた。しかし諦めきれず、2年前からごろびき網の復活に向けた活動に取り組み始めた。
最大の課題は、網の費用だ。伏黒さんはこれまでに培った人脈を生かし、県の地域づくり活動促進事業交付金、市の地場産品促進事業の補助金を利用し、工面に成功した。
昨年9月に待望の網が完成するも、技法を知る人が少なく、途絶えた漁の調査は難航。北澤会長らの助言を受け「伝統も受け継ぎつつ、楽しめる事に重きを置いた、観光向け『新ごろびき網』」として方針を固め直した。9月から11月にかけ実施した試験漁では、普段刺網漁を行う慎海丸の田中さんに網掛け船を依頼。勘四郎丸の松本さんも「やるからには魚が獲れた方がいいだろう」と手を貸してくれることになった。
心強い協力者を得た復活計画は、今年夏から本格的なイベントを開催できるまでに至った。しかし、5月23日に予定されていたイベントは、近隣の学校の運動会と重なり人手不足、更に海の状態も悪く、中止となってしまった。「簡単じゃないと分かっていたつもりでしたが、痛感している」と伏黒さん。計画を立て直し、8月に再度イベントを予定している。
「平塚ビーチのイメージアップにもつながるはず」と北澤会長ら関係者の期待は大きい。伏黒さんも「週末は平塚で”ごろびき”して獲れた魚で浜焼き、といったプランが定番化し、漁業に限らず、市全体も盛り上がれば」と夢を広げている。
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