先月、第一詩集『ウイルスちゃん』で第17回中原中也(ちゅうや)賞を受賞した 暁方(あけがた)ミセイさん みたけ台在住 23歳
”自然体”で綴った死生観
○…詩人デビューから2年目。第一詩集となる『ウイルスちゃん』で、現代詩の新人登竜門とされる中原中也賞に輝いた。「世界葬」「鷺沼プール」「中国紀行」など、死の方向から見た生を独特の世界観で綴る。受賞について、「本当かなって半信半疑。でも、賞を頂いたことで、もっと自由に書けるような気がしている。書ける限り、ずっと書き続けたい」と喜びを滲(にじ)ませる。
○…『ウイルスちゃん』という表題。出版社から猛烈な反対を受けたが、どうしても譲れなかった理由がある。学校生活や社会との距離を感じていた学生時代。「馴染めなくて、同じ空間にいても、壁一枚隔たれているような感覚だった」。真面目で居なければと抑圧する一方で、突拍子もないことをしたいという疼(うず)き。浮遊しながら人間を見据え、肉体をむしばむ”ウイルス”を自身に重ね、思いを馳せた。「愛着すら感じて、『ちゃん』づけに」と微笑む。
○…中学生からインターネットの詩人コーナーへ投稿を始める。詩への芽生えは幼い頃、父と度々訪れた富士山や丹沢での感覚。自然と自分、宇宙と自分―。「自然の中に居る自分の方が、現実のような気がした」。宇宙の延長線上にある生物の営みを言葉に刻みたい。そんな折、宮沢賢治の世界観に共鳴し、心酔した。「幼い頃からのめり込んできたので、まるで父や兄のような慕い方」と表情を緩める。
○…大学生時代、中国やモンゴルへ旅をした。どこまでも広がる荒涼とした大地。切り立った断崖絶壁の道程。そこには漠然と憧れた死が身近にあった。出会う人々との距離感も心地よい。「社会という着ぐるみを着る必要がなかった。身体ひとつの”ストレンジャー”として、自分や自然と向き合えた」。詩人でやっていくと腹を括(くく)ったのは、その頃から。「生涯、自分のしてきたことが何も残らないのは嫌で」。現在、社会人1年生。”現実社会”に挑んだ若き詩人が辿る新たな境地が待ち遠しい。
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