港北区 社会
公開日:2025.12.02
青葉区
一刀から広がる世界
岩渕 俊亨さん
仏師を志したあの日から、早50年弱。仏師・彫刻家の岩渕俊亨さん(72/千葉県)は、青葉区を中心に仏像彫刻の教室を開講。その魅力を多くの人に伝えている。
ものづくりが好きで、高校卒業後は布団だけかついで上京。著名な彫刻家のもとで研鑽の日々を送っていた岩渕さん。25歳の時、師が手がけた千手観音像の神々しさを目の当たりにし、「打ちのめされるくらいの衝撃を受けた」。改めて仏師に弟子入りし、修業の日々を経て佛教美術協会に入会。30歳で独立した。
仏像彫刻の講師を始めたのは、それから5年後のこと。「昔は引っ込み思案だったし、当時は生徒さんのほうが年上でね」と苦労もあったが、「道具も持ったことがなかった生徒が、『楽しい』と喜ぶ姿が何よりうれしい」とほほを緩める。
教室の一つ、「睦木の会」(青葉台カルチャープラザ)の生徒は、40代から80代を中心に12人。「自分の手で形になっていく。仏像との距離が縮まる感覚は、やってみてこそ」「自分を省みながら一体一体彫っている」「仏教の教えに触れられるのも面白い」――。各々に語る生徒たちに、岩渕さんは優しい笑みを向け、「彫っていると木が手に馴染んで、思う通りになってくれる。幸せですよ」としみじみ。
老若男女、「気持ちさえあれば誰でも始められますよ。道具を揃えるのは大変だし、体力も使うけど、その価値がある」と岩渕さん。声に熱がこもる。自身も「まだ誰も作っていない、自分なりの新しいものを」と、経験を積んだ今だからできることを模索。他ジャンルにも触れ、学び、世界が広がっていく日々だ。アイデアが降ってくるのはいつも突然。「毎日考え続けて積み上げたものが、ふっと形になる。だから、上手くいってないと思えても諦めちゃダメなんでしょうね」
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