障がいがある娘と共に歩む日々の記録映画が上映される 西村 信子さん 上飯田町在住 74歳
幸せって何だろう
○…「奈緒ちゃん」。今もそう呼ぶ声はすこぶる優しい。てんかんと重度の知的障がいがある娘・奈緒さんは1973年生まれの44歳。生後間もなく1時間以上の発作を起こすなど出産直後から不安でいっぱい。周りと比べ「なぜ自分だけ」と悔しくて何度も自分を責めた。それでも「奈緒がいたからこその人生」と今は胸を張って生きている。8歳から35年に渡る、泣いて、笑って過ごした家族の記録がドキュメンタリー映画として、1月12日に泉公会堂で上映される。
○…上飯田町に移り住むきっかけになったのは一枚のチラシだった。娘を思い「公園が目の前」の売り文句に飛びついた。戸塚から転居を決めたものの、これからどう育てればと思い悩む日々。そんな家族の心を救ったのは、奈緒さんが通っていた幼稚園の園長の言葉だった。「奈緒さんの子育ては地域でやらなくてはいけないよ」。ずっと先を見据えた人の優しさに触れ、閉ざしかかった心がほぐれていくのを感じた。
○…「同じ境遇の人のために何かできないか」。障がいがある子を持つ親のグループ「つぼみの会」に所属し「社会福祉法人ぴぐれっと」の設立に携わったのは奈緒さんが7歳のころ。奔走した時間は、自分自身と向き合うための貴重な時間でもあった。「唯一子どもから逃げられる場所だったのかもしれない」。現在グループホームに入所する奈緒さんを思うと、これからも頑張ろうと力が沸いてくる。「作品を観た人が、何気ない生活の中で忘れている優しさを思い出してもらえたら嬉しい」と話す。
○…一昨年、相模原で起きた殺傷事件に衝撃を受けた。「人は誰でも優しい心を持っているはずなのに」。許せない、しかしそれ以上に悲しかった。「幸せってなにか、今も分からない」。優しいことばで、争いのない暮らしができたらいい。娘に向ける眼差しの中には、いつも優しい世界が広がっていることを願っている。
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