多彩な音色と向き合って

　○…「新時代のファンファーレみたいなものになったら」――。顧問を務める領家中学校吹奏楽部が３月31日に泉公会堂でスプリングコンサートを開く。今回はＯＢ・ＯＧや前任校の元教え子らが結成した楽団も出演するほか、プロジェクションマッピングなどの視覚的な演出も盛り込む。「翌日は４月１日。それぞれが次に進むその前に、盛大な演奏会をやれたら」と準備を進める。

　○…中和田中で６年間、領家中では８年間吹奏楽部の顧問を務めてきた。「今の３年生は小学校の卒業式も中学の入学式も縮小開催で、人と疎遠になる時代を過ごしてきた」。それゆえ、多くの関係者が集まる場になればとの思いもあり、定期演奏会にいつもと違う工夫を盛り込んだ。練習にも年齢を超えた交流が生まれている。

　○…岩手県出身。岩手大学教育学部に進み、同大大学院でも学んだ。岩手の中学校や、横浜に移って小学校教諭を経験し、吹奏楽部の顧問を務めるようになったのは、美術の教諭として中和田中に着任して１年目の時。だが初めての部活指導で指揮棒も持っておらず、当初は部員からの期待に応えられない時期もあった。頼みの綱は高校時代に吹奏楽部で吹いていたトランペット。「課題曲を一緒に吹くことしかできなかった」。そうして時間をかけ、信頼と経験を積み重ねた。

　○…部の活動ではアーティストとのコラボやイベント出演にも積極的で、練習は和やかな雰囲気。「基本的にゆるいんです」と笑うが、そんな中で「互いを認め合うこと」を大切にする。「学校や先生は『これはダメ』と言いがち。でもそれは価値観の押しつけでもあり、いじめの原因にもつながりうる」。一人ひとりの「音色」と向き合って、指揮棒を振る。