琵琶法師として慰問活動などを行う 樋泉(ひいずみ)舟水(しゅうすい)さん 柏尾町在住 66歳
始まった”お返し”の旅
○…「本物の琵琶法師になりたい」と千葉の寺院で修行を6年間積み、僧として認められたのが3月6日。法名は「凄まじい水の如く」という意味が込められた「如水(にょすい)」。これから何をしようかと考えた矢先、11日に起きた震災で、皮肉にも「凄まじい水」が東北を襲った。「これは自分に課せられた使命だ」。鎮魂の楽器、琵琶で「疲れた心を救いたい」。ただ単純に、そう思った。
○…代表を務める「琵琶だるま会」では定期的に福祉施設などを訪れ、演奏活動を行っている。琵琶法師は「平家物語」などの軍記物の語り部としても知られるが、元々は戦死者の魂を鎮める人と言われている。「琵琶の響きは命の叫び。人は魂の声に救われる」。演奏会では、心に染み入る音色と、唱える言葉に涙を流す人もいるそうだ。
○…南区井土ヶ谷出身。芸者が集まる花街で生まれ育ったため、幼い頃から鼓や三味線、長唄などの音色に囲まれていた。近所には日本を代表する琵琶奏者、故・中谷襄水(じょうすい)さんが住んでおり、25歳の時から手ほどきを受けた。女優・樹木希林さんの父親としても知られる中谷さんはとても厳しい師匠。「間違えるとバチが飛んできてね。行くのをやめると、奥さんが『ごめんなさいね』って迎えに来てくれたんだ」。厳しいながらも、基礎を叩きこんでくれた師匠と、優しくしてくれた奥さんには、今でも感謝の気持ちでいっぱいだ。
○…その後、商売人として生計を立てながらも、琵琶奏者として活動は続けた。伝統を大事にしながらも、「自分の道を見つけたい」。選んだ道は「創作琵琶」。古典だけでなく、短歌や現代の物語なども自ら琵琶で創作する。「僧になってこそ、琵琶法師」。やっと今、長年のわだかまりが解け、自分が納得のいく琵琶が弾けるようになった。震災から49日が過ぎたら、被災地に向かう予定。「これまでたくさんの方のお世話になった。これからは”お返し”をしたい」。穏やかに語った。
|
<PR>
|
<PR>
4月18日