3月10日に完成した冊子「柏尾の百年史」の編さん委員会委員長 齋藤 純一さん 柏尾町在住 64歳
先人と次代をつなぐバトン
○…5cm四方の小さなモノクロ写真には、1962年に行われた稚児行列の様子が写っている。写真を引き伸ばすと、2代目の町内会長や今もある成正(じょう しょう)寺の名があるのが分かった。多くの伝統を残してくれた先人と、貴重な写真を提供してくれた住民。彼らのおかげで、昔と今をつなげられた瞬間、涙が頬を伝った。「ありがたい」。1年をかけて作った百年史。内容の骨格作りや資料の意味を調べるのには骨が折れたというが、資料を見せて町の歴史を語る様は、熱を帯びていた。
○…子どものころ、町内は100世帯もなかった。それが昭和30年代以降、開発が進み、転入者が増加。今、世帯数は当時の10倍以上に。一方、土着の人は1割もいない。「我々が生きているうちに、柏尾の歴史をまとめよう」。先人への感謝の思いを込め、次代にたくすバトン。百年史は地域愛の結晶だ。そんな思いに柏尾小学校やブリヂストン横浜工場も共感。地域ぐるみで冊子は作られた。
○…自分の先祖にも関心がある。きっかけはアレックス・ヘイリー著の「ルーツ」。「一生で1万冊」と目標を掲げるほどの読書好きが挙げる人生の一冊だ。アメリカ黒人の著者が、アフリカから奴隷として連れて来られた先祖を辿る物語で、民族に誇りを持つ大切さを感動とともに教わった。「私も書かなくては」。親族の生没年や結婚時期などを記した家系図を20年書き続けている。これらを活用して、自らのルーツが、豪族・齋藤一族の分家だと推測されることも分かった。
○…「お年寄りだけでなく、若手で町に活気を」。大学卒業後に同年代の仲間と青年会を立ち上げてから町内会活動を続けているが、そんな自分が今はもう、「お年寄り」。6年前に新しい青年会を発足したが、百年史の改訂版や隣の上柏尾町の歴史冊子作成、柏尾小に歴史資料館を作ることなど、次代に向けた構想はまだまだある。バトンタッチは、もう少し先のようだ。
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