ある日、記者の元に1本の電話が入った。「県警本部前に設置してある銅像の作者は私。タウンニュース で記事を書いてもらえないか」という。聞けば『神奈川県警 銅像』でネット検索すると、「作者不明」と書かれた記事が出てくるのだとか。ちょうど今号で警察署の防犯特集も企画しているし、タイムリー!銅像の原作者を名乗る伊藤吉治さん(80)=瀬谷区=に、記者が会って話を聞いた。
ネットの情報「真実と違う」
話題になったのは、中区海岸通りの県警本部前に建つ写真の像だ。「10年も前にネットで取り上げられていたことを最近知った。しかも作者不明とか身体のバランスが悪いとか言われていたなんて…」と肩を落とす伊藤さん。試しに県警の広報課に銅像について問合せてみると、1992年に本部新庁舎の完成に合わせて設置されたこと以外は「30年も前のことなので分かる人がいない」とのこと。そこで改めて伊藤さんに聞いてみると様々な真実が明らかに。
県警に柔道指導要員として入り、幼い頃から絵が得意だった伊藤さんは署内から啓発ポスターなどのイラストを頼まれることが多かった(長年某日刊紙で挿絵を描く腕前)。新庁舎に設置する銅像のアイデアを担当課から相談され「県民と警察が一体になって町を守っていく姿を表現したいと聞き、すぐに閃いた」とその場でイメージをスケッチ。その絵がそのまま原画となり、製作会社がそれを忠実に再現したというのが経緯だ。
ネット上で指摘されていることに対しては「急ピッチで製作が進み、正式なデザイン画として使われるとは思わなかった」と反論。また当初は見上げるほど高い台に乗せると聞いていたが、実際は芝生の上だったことも説明し「イメージと違うので、当時はだいぶ抗議したんですよ。作者としてのプライドがありますから」と振り返る。
しかし設置後は、観光客の撮影スポットになるなど人気は上々で「銅像の警察官はどこを指しているのか?」と記者に取材されたことも。指先を辿ると某金融機関の前にある「財布をくわえた犬の像」に行き当たると噂になったそうで、この話は記事にもなった。
パトカーに付いている「アレ」も
取材を進めると、何と「県警のシンボルマーク」も伊藤さんがデザインしていたことが判明!パトカーや警察官の制服にさり気なく付いているあのマークだ。当時の本部長が「全国初となる県警のシンボルマークを作ろう」と提案し、伊藤さんをはじめ絵心のある5人からデザインを募集。署内選考では一度落選していた伊藤さんの作品を再審したデザイン会社のプロが採用し、79年3月にお披露目された。マークは県の鳥・かもめに、神奈川のKと警察のPを組み合わせて図案化。丸が団結を表している。
※ ※ ※
さて、警察官が指さす先には本当は何があったのだろか?「21世紀の未来。『官民一体で未来の治安を守っていこう』という思いを込めたんです」と伊藤さん。安全安心の街作りの象徴ともいえる銅像。作者の「真の思い」を聞き改めて見ると、愛着が湧いてきた。
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