認知症高齢者の位置情報をスマートフォンのGPS機能などを使って把握するシステムの実証実験が六ツ川地区連合自治会で1年間行われてきた。市とALSOK(綜合警備保障)の協定に基づいて進めていたもので、3月16日には機器を使って高齢者を探す模擬訓練を実施。同自治会は、実験からシステムの有効性は見出したものの、対象者がシステムをどれだけ取り入れてくれるかやスマホ操作の難しさなどの課題も浮き彫りになった。
市はALSOKから提案を受け、同社の製品「みまもりタグ」を使った認知症高齢者の見守りの実証実験に関する協定を結んだ。実験を行うため、これまでも高齢者の見守り活動に力を入れていた六ツ川地区が市内唯一のモデル地域に選ばれ、昨年3月から製品を使用した実験を始めた。
小型タグから電波
ALSOKか昨年6月か「みまもりタグ」のサービスを商品化。高齢者など、見守る対象の人に幅約6cmの電波を発信する小型タグを身に着けてもらい、スマホに専用アプリをダウンロードした人のそばを通ると、時間と位置情報がサーバーに送信され、登録者はそれを確認できるもの。同社によると、タグを身に着けた人がスマホを持った人の20〜50mそばまで行くと、電波が受信され、位置情報が送信されるという。
スマホで位置情報
実験開始後、同地区の呼び掛けに応じたボランティアら8人がタグを携帯。約60人が専用アプリをダウンロードした。
3月16日には、認知症の人が徘徊し、行方不明になったことを想定した模擬訓練を実施。タグを持った認知症役の男性が六ツ川一丁目コミュニティハウスからマルエツ六ツ川店方向を歩き、道沿いの4カ所にアプリを入れた人が立ち、実際にどのように情報が送られるかを確かめた。確認画面では、男性が数分ごとに移動する様子が地図上のポイントで分かり、マルエツ付近で見つけることができた。
賛同者拡大が課題
同地区の実証実験担当者で自らもタグを身に着けていた市川敏夫さんは「おおまかな位置が把握できることは分かったが、アプリを入れてくれる人が少ないと、徘徊者を探す情報が得られない」と課題を口にした。また、スマホの操作に不慣れな人が多いことや、アプリを有効にするには、スマホのGPS機能をオンにする必要があり、「スマホの電池がすぐになくなるので、オフにしていた」などの問題も分かった。ほかにも、実際に認知症の人が周囲に知られたくないために、実験に参加しないこともあり、現実的にどこまで有用なものかは確かめづらかった。
認知症サポーターの養成に取り組む小早川津恵乃さんは「本人の同意は必要だが、家族や周囲が取り組まないと進まない」と話す。
市健康福祉局の担当者は「認知症の方を見守るのに、市としてどの方法が効率的か考えていきたい」とし、ALSOKの担当者は「安全、安心を守る会社として、取り組みを進めたい」としている。
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