鶴見区 文化
公開日:2026.07.30
西岡甲房 国宝級甲冑の修復担う 夫婦そろって技術保持者に
鶴見区内には、日本に古くから伝えられてきた甲冑の修復や復元、模造製作が行う「西岡甲房」がある。営むのは選定保存技術の保持者に認定された西岡文夫さん(73)と妻の千鶴さん(72)=人物風土記で紹介=だ。
文夫さんは2022年に「甲冑修理」の保持者となり、千鶴さんは7月17日に行われた国の文化審議会で「組紐(クテ打ち)製作」の保持者に認定された。
約25年前に鶴見区内に甲房を構えた。今まで徳川家康や武田信玄など国宝級の甲冑修理や模造復元をし、修理した数は約1000点、模造復元は約20点となる。現在は夫婦と弟子4人で日本の文化財保護に熱を注ぐ。
選定保存技術となった組紐製作の「クテ打ち」は近世から主流となった技法とは異なり、古代から中世にかけて行われていたもの。糸の一端を輪にしたものを持ち、複数人で綾を取るように組んでいた技法で、複雑な文様の紐を組むことも可能とされている。
1時間で1センチ
本来複数人で行うクテ打ちを1人で作業が行えるよう、千鶴さんは特製の台を自作して効率化も図っている。しかし、1時間作業をしても1センチほどしか組めないなど、地道な職人技が必要となる。千鶴さんは「組む紐の長さによっては途方もない時間がかかりますが、手元が狂ってはいけないので集中力との戦いです」と語った。
文夫さんは小学生の頃放送されていた大河ドラマの中で甲冑に興味を持ち、趣味でプラモデルなども作っていた。転機はグラフィックデザイナーの仕事をしていた25歳の頃。「甲冑師」の職を知り、図書館や博物館で甲冑の資料を調べ、独学でミニチュアの製作から始めた。師匠との出会いもあり、本格的に甲冑師して動き出そうとする中、甲冑製作には「組紐」が必須で、文夫さんが千鶴さんに組紐製作を依頼。夫婦で文化財を保存する立場となった。
2人が思い出と話すのは国宝「赤糸威(おどし)鎧」の初の復元模造。何度も現物を調査し、素材選びからこだわり、当時も使用されていた分厚い水牛の皮を使用する徹底ぶりで当時の甲冑を再現した。
甲冑の基本部品は小札(こざね)
という小さな短冊状の板で、一式を製作するには2000枚ほど必要。漆塗りの工程後、組紐を通して小札同士で部品を作る「威」と呼ばれる作業を行い、製作全体で2年以上の歳月が必要だという。文夫さんは「技術が失われれば文化財も失われかねない。妻とともに技術を『継承』して守り続けたい」と語った。
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