高津区 社会
公開日:2026.09.04
「患者の暮らし」に寄り添う 在宅医療などを手掛ける紅谷医師に聞く
福井県などを拠点に、在宅医療や医療的ケア児の支援などに長年取り組む「オレンジホームケアクリニック」の紅谷浩之医師がこのほど、川崎市高津区での新たな在宅クリニックの開設をサポートする。本紙は紅谷医師にインタビューを行い、都会における在宅医療のあり方や、医療的ケア児の支援、地域連携を通したまちづくりへの思いを聞いた。
「オレンジホームケアクリニック」は2011年開設。以来、福井県で培った「患者の暮らしに寄り添う在宅医療」のノウハウを全国の医師に広く提供している。高津区においても同クリニックの紅谷医師がサポートする新設の「ここにいるよクリニック」(小坂真琴医師)が、地域に根ざした医療提供体制の構築を目指している。
Q.都会での在宅医療の課題と目指す形は。
紅谷医師:都会の在宅医療は効率重視になりがちですが、私たちは患者さん一人ひとりの「暮らし」に寄り添うことを大切にしています。都市部ではいわゆる「3分診療」のように、手際よく患者さんを診るスタイルが広がる側面もありますが、福井での実践と同様に、時間をかけてじっくりと話を聞き、向き合う在宅医療をまち中で展開することに大きな存在価値があると感じています。病院のように決められた時間に食事や服薬を管理するのではなく、ご本人の生活リズムを尊重し、暮らしの中に療養を取り入れていく。医学的な管理以上に、その人らしさを保つ方が体調が良くなる方も多く、それが在宅医療の本質だと考えています。
医療ケア児支援について
Q.医療的ケア児の支援にはどう取り組みますか。
紅谷医師:病気や発達の特性によって家に引きこもりがちなお子さんたちが、社会に出られる環境をつくることが目標です。例えば、授業中に座っていられない子に対し、カチッとした椅子をバランスボールのようなものに変えるといった少しの環境調整で、落ち着いて授業を受けられることがあります。子どもを変えるのではなく、周囲の環境や声かけを工夫することで、共に生きる居場所を広げたいと考えています。また、医療的ケア児が18歳や20歳を超えると支援制度の壁に直面し、急に引きこもってしまうという深刻な課題もあります。ご家族を含めたサポート体制を構築し、社会から孤立させない視点が欠かせません。
気軽な相談相手に
Q.今後の抱負と地域づくりへの思いは。
紅谷医師:クリニックの診察室で患者さんを待つのではなく、医療者自らがまちへ出て、地域のニーズを探ることが重要です。地域の行事に参加し、本当に困っている人がどこにいるのかを知る。そして医療の枠にとらわれず、子どもの居場所づくりに取り組む方々と連携するなど、地域に足りないものを補う活動も並行して進めていきます。単なる医療の提供にとどまらず、「気軽に話を聞いてくれる相談相手」として地域に溶け込み、深く根ざした新たな医療の形を築いていきたいです。
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