『午前零時の評議室』で第28回日本ミステリー文学大賞の新人賞を受賞した 衣刀 信吾さん(本名:伊藤信吾) 富士見在住 61歳
法で守り、ペンで魅す
○…本業は相模原市民の悩みに寄り添う「マチ弁(まちの弁護士)」。裁判や事件が身近な弁護士の視点で、裁判員裁判を舞台にした本格ミステリー作品をリアルに書き切った。受賞したことで次の作品へのプレッシャーを感じながらも、読者から寄せられる感想や弁護士仲間からの評価に喜びをかみしめている。「ミステリーの評論家からも本として純粋に評価してもらえた。本当に嬉しかった」
○…「ドキドキ感が好き」。幼い頃からミステリー小説を読んでいた。高校時代には文芸部で小説を書いていたが、小説家を志していたわけではなく、コロナ禍で時間に余裕ができたことを機に筆を執った。「読者を驚かせたい」との思いで「不思議さ」を考え抜いた。アイデアを思いつくと、寝ているときでもスマホを手に取り書き進めた。
○…相模原市出身。「市民ファンドゆめの芽」の運営に関わるなど市民活動にも熱心に取り組む。「地元の人に助けられて仕事をしてきたので当たり前。ときどき、ボランティアなのか仕事なのかどっちかわからなくなる」と笑う。同業者からの信頼も厚く、昨年度までは日本弁護士連合会の副会長も務めていた。任期が終わって余裕ができ、これからは仕事や地域活動に一層打ち込むとともに「ミステリーの本を読みたい。読まないと刺激にならない」。
○…期待されている次作については「まだ、面白いことを思い付いたときにメモをしているぐらい」と濁すが、本を読むときは書き手目線で読んでいる。小説のみならずホームページやチラシ制作にも才能を発揮する表現者。「ものごとを創るのが実は好きなのかも。自分じゃなきゃできないこと、自分独自の表現をしたい」