町田市立博物館より【16】 からくり付懐中時計の秘密 学芸員 齊藤晴子
現在当館で開催中の「魅惑の小宇宙!懐中時計展」では、数点のからくり付懐中時計が展示されていますが、今回はそのうちのいくつかをご紹介しましょう。
ひとつ目は、19世紀初頭のイギリス製の懐中時計で、文字盤にエナメル彩(七宝)で教会らしき建物と風車が描かれています。どこがからくりになっているかというと、風車の羽根の部分が金属でできていて、1分間に一回りします。装飾の一部でありながら、同時に秒針としての役割も果たしているわけです。
ふたつ目にご紹介するのは、19世紀スイス製の懐中時計です。一部がスケルトンになっていて、内部の歯車なども垣間見ることができます。文字盤の周囲は彫金で装飾され、上方には二つの鐘があり、その脇にはハンマーを片手に持った二人の人物が表されています。下の方には葡萄を食む山羊の姿が見えます。
開いた窓から…
実はこの懐中時計には秘密の仕掛けがあり、下部のボタンを押すと、山羊の装飾がついているパネルが横にスライドし、絡み合う裸の男女の姿が見えるようになっています。さらにこの懐中時計には時刻を音で知らせる機能がついていて、現在では壊れていて動きませんが、本来でしたら上のボタンを押すと音が鳴り、それに合わせてさまざまな箇所が動くように作られています。二人の人物はハンマーで鐘を突き、山羊は首を振って葡萄を食べ、秘密の場所に隠された男性はお励みあそばすわけです。
いったいこの秘密の仕掛けは何の目的で作られたのでしょうか。よくわかってはいませんが、私は男どうしでこっそり見せ合って楽しんでいたのではないかと考えています。ちなみに同僚学芸員のYは、女性にこっそり見せて「キャー」と言わせて反応を楽しんでいたのでは、と言っています。いろいろ想像できるのも面白いですね。
これらの作品を含む博物館所蔵の懐中時計104点は、現在開催中の「懐中時計展」でご覧いただけます。この機会にぜひご来場ください(3/6まで)。
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宮司の徒然 其の135町田天満宮 宮司 池田泉11月30日 |