町田版 掲載号:2017年9月21日号
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町田万葉散歩【3】 「七国山を歩く」 沢野ひとし

 町田市北部に七国山はある。標高は128mといたって低いが、あたり一帯には多摩丘陵の原風景が今も息づいている。七国山はその名の通り、七つの国が見渡せたからこの名が付いた。奥多摩や丹沢山脈が広がって見渡せる。この近くに私が引っ越してから四十数年が過ぎてゆく。



 これまで三代にわたって犬を飼ってきたが、今はみな亡くなってしまった。歩きながら犬たちのことをしきりに思い返す。



 七国山辺りの道はどんな細い農道も暗唱出来るようになった。のどかな田園風景の丘を散策しているときに、奈良の明日香村の風景と良く似ていることを思い返し、しばしば立ち止まる。町田周辺には奈良と関係のある地名が多い。小道を歩きながら万葉の時代を回想している。



 秋のお彼岸の頃に畑の緑に、真っ赤に咲いたヒガンバナに出会う。発芽から開花まで一週間、まるで突然に開花する。それまでこの花のことなどいつもはすっかり忘れている。それが鮮やかに燃えるように赤い花が咲きみだれる。気持ちの中にまだ夏の気配が残っているので不意をつかれ思わずたたずんでしまう。



 別名「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」

(これを見る者はおのずから悪業から離れるという天界の花)と伝えられる。その花に思わず人は頭(こうべ)を垂れる。



 道の辺の 壱師(いちし)の花の

 いちしろく 人皆(みな)知りぬ

 我が恋づまは

(作者未詳)



 壱師の花とはヒガンバナをさす。



 「路傍に咲くヒガンバナのようにはっきりと、人はみんな知ってしまった。私の恋しい妻のことを」



 万葉集の中でヒガンバナの歌はこの一首のみ。そこに心が動く。
 

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