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町田 コラム

公開日:2019.02.14

町田市立博物館より37
「自立しません」
学芸員 齊藤 晴子

  • 淡島雅吉《マーバロン花器》昭和41年頃 淡島ナナ氏蔵

 「自立しません」と聞いて、耳が痛い御仁もいらっしゃるかもしれませんが(筆者も長らく親のすねかじりをしていたので耳が痛いですが)、今回は人の話でなく作品のお話です。



 現在、町田市立博物館で開催中の「近代ガラスデザインの先駆者 淡島雅吉」展には、作者によって「マーバロン」と名づけられた作品が3点出品されています。「マーバロン」とは、淡島雅吉のイニシャルであるMAと、英語で「風船」を意味する「バルーン」を組み合わせた造語で、ご覧のようにまん丸の形をした作品です。もとは昭和39年の東京オリンピックの屋内競技場の装飾として作られたもののようです。



 で、この作品が「自立しない」のです。ガラスの技法としては「宙吹(ちゅうぶ)き」とよばれる型を使わない技法で、吹きっぱなしで平らな底もつけられていないので安定しません。なぜ底をつけなかったのかは不明ですが、淡島雅吉は吹きガラスの自然な円みを好んでデザインしていた作家なので、底をつけると美しくないと感じていたのかもしれません。



 しかし立たないことには展示にならないので、立たせるための土台について試行錯誤を繰り返しました。まずビニールチューブを丸めてテグスで留めてみましたが、まん丸にならないのでうまくはまらずダメでした。丸い形を保たせるために中に針金を通してみましたが、見た目が悪いので却下。次にアクリル製の輪に載せてみるも、直径が大きな作品はうまくおさまりましたが、径が小さい作品は底の形が合わず×。いろいろ試して最後にたどり着いたのが、本来は椅子のキャスターを固定するためのプラスチック製の受け皿でした。



 展覧会としては、作品の固定方法やライティングなどを気にすることなく、ただ「ああ、いい作品だったなあ」と感じていただけるのがベストだとは思います。ただ時には作品の展示方法にも目を向けてみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。



 ちなみに「近代ガラスデザインの先駆者 淡島雅吉」展は4月7日(日)まで開催しています。皆様のご来館をお待ちしております。

 

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