町田 コラム
公開日:2021.07.15
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の81
ボケ
里のやぶに背の低い赤いボケが咲く。定期的に草刈りがされる場所でも、地面に張り付くようにして実までつけている。ボケの実は淡い緑で硬い。幼い頃、よく父が釣りや山菜採りに連れて行ってくれた。山歩きの途中で道端のスカンポ(イタドリ)の太い若芽をポコンと音がするところで折り、酸っぱい茎をかじりながら歩いたり、シドメとかシドミと呼ばれるボケの実をかじって、目の覚めるようなあまりの酸っぱさに顔をくしゃくしゃにしたものだ。
ボケは木瓜(もけ)がなまったものと思われる。近い仲間としてカリンや梅がある。平安時代に中国から園芸用として持ち込まれ、一部が野生化してクサボケと呼ばれている。今でも立派な生垣にしたり、盆栽にしたり、品種も白やピンクが混ざったものなど庭木としても残っているが、バラ科の特徴であるトゲが鋭いのは難点だ。ボケの実はシュウ酸があるため多食するとお腹をこわす。青梅も同様だが5個くらいなら大丈夫だ。ただしとても酸っぱいので時折かじるくらいがちょうどいい。梅は熟すと綺麗な橙色になって果肉は柔らかくなるが、ボケの実は硬いまま黄色くなって落下するらしい。まだ見たことがないので見つけたらかじってみたい。じつは去年、庭の園芸品種のボケにたくさんシドミができたので、喜んで青いうちに全部採ってホワイトリカーに漬け込んでしまった。一つくらい残して黄色くなるのを待てばよかったと後悔しても後の祭り。そろそろ飲み頃になっているはずだが、もしも顔がくしゃくしゃになるほどだったらどうしよう。
ステイホームを呼びかけつつ、パブリックビューイング会場を作ったり、なんとか観客を入れようと等間隔にバツ印を貼った席が並ぶスタジアムの客席。不要の外出をしないでと言いつつ、集まる場所を作ってるなんて、この矛盾に気づいていながら後戻りできない人たち、ボケの実かじれば目を覚ますかも。
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