町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の90
温暖化
われわれの地域では彼岸花というと曼珠沙華だが、日本は南北に長いから当然気候も違う。春の訪れも桜前線の北上の様子を見ればよくわかるだろう。曼珠沙華が彼岸に咲くのはおおむね、つまり秋に気温が20〜25度くらいになる地域。沖縄から九州にかけては彼岸より早く咲き、東北は遅いということだ、というのが普通だった。さてさて地球温暖化はとうとう地中にまで影響してきたようだ。
コロナ禍にさいなまれる前の平成の頃、彼岸明けも近い頃の当社秋祭りでは100店余りの出店がひしめき、宮神輿も繰り出すから玉垣沿いは見物客が乗り出すように張り付いて、安住の場所だった玉垣沿いの草木もその時ばかりはひとたまりもない。かくして、彼岸に合わせるように咲き競っていた曼珠沙華は半数以上が大ダメージを受けていた。ところが、ここ数年で明らかに開花時期が早くなってきている。ついに一週間から10日のずれが毎年続き、祭の頃にはおおかた枯れ始めている。最近増えてきた白花の曼珠沙華は赤花よりも開花が遅く、今年はちょうど祭の頃に盛期になっているが、これもまた一週間余り早くなっている。
このままではさらに草木の生育のずれが大きくなっていく。他にも彼岸に咲く花として、萩やオミナエシ、ススキ、キキョウなどがあげられるが、これらが大きくずれてしまうと大変なことが起きる。中秋の名月を飾る草木が手に入らなくなる。ススキは枯れて種が飛びやすい状態、つまり枯尾花(かれおばな)になってしまっているかも。そもそも春の彼岸では「牡丹餅(ぼたもち)」なのに、秋の彼岸に萩が咲くことから「おはぎ」と名を変えるあんこ餅も、萩が咲かない彼岸のおはぎになってしまう。春の七草同様に、秋の七草もお月見セットとして店頭で売られるだけになってしまうのだろうか。このような民間の恒例行事に影響するどころか、冬に蚊や蜂に刺されるなんてことも......。このままでいいわけがない。未来の子どもたちのため、エネルギー問題の解決を最優先してほしいと願うばかり。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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