町田天満宮 宮司 池田泉 宮司の徒然 其の95
カラタチ
当社境内には布袋竹はあるが孟宗竹はない。茅の輪の枠や手水舎などには孟宗竹を私が加工して使っているが、青竹はやがて乾いて褐色になるから定期的にいただきに行く。とびきり太いのが必要な時もあれば、ほどよい若い竹が必要な場合もあり、幸い快くくださるところが何箇所かあって助かっている。境内の手水舎はコロナ対策で柄杓が置けなくなり、青竹の筒を取り付けて手を洗うようにしていただいている。その竹が古くなったので、先日同級生のお宅へ伺い細目の孟宗竹を1本伐らせてもらった。その時に庭の柑橘類までお土産にいただいてしまった。鬼柚子(獅子柚子)、四季なりオレンジ(おそらくネイハキンカン)、カラタチ。
鬼柚子はテーブルに置いておくだけで薫る。四季なりオレンジは飾っても綺麗だし、食べても美味しい。今年もキンカンのように煮よう。鬼柚子は獅子柚子とも呼ばれ、獅子は邪気を払う縁起物として、暮れに店頭に並ぶこともある。皮が厚く長持ちする上、中身に空洞が少ないから「実入りが良い」という洒落でも新年の縁起物として飾られる。確かにごつごつしていて鬼や獅子の顔に似ているが、実は柚子ではなくポンカンの仲間。どうやら色だけで柚子とされたらしい。
カラタチは初めて見た。白くて薄い毛に覆われた実、そしてどの柑橘系よりも長くて強靭なトゲ。昔はカラタチを生垣にしていた理由がわかる。これなら人間どころか犬猫も侵入できない。ただし、剪定してそのままゴミ袋に入れたらトゲで穴だらけになる。乾かして燃やすとしても住宅地では難しいから手入れが大変だし、子供がうっかり触ったら怪我するし、コンクリートやブロック塀に移行していったのは無理もない。しかし、カラタチは葉にも果実にも薬効があって、湯船に浮かべても肌に良いらしい。有効成分の含有量が多く、そのままかじると苦く、薄切りして乾燥させて用法を守って取り入れないとお腹をこわすという。苦くて強い薬効。漢方薬としても昔から用いられてきた理由がわかる。
カラタチの生垣なら、常緑で防御力があって、白い花も咲き果実は薬になり、アゲハ蝶が卵を産みに来るし(私的趣向)、地震があってもブロック塀のように倒れたりしない。安心安全な上に良いことずくめ。厄介な手入れさえなければ、これからの時代、自然に優しくてうってつけではないか。
平安時代以前に長江からやってきたカラタチ。経済や観光では世界とつながっている中国。薬効を提供するも長いトゲは防御に留まらない。
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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