町田 コラム
公開日:2022.11.24
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の113
人間がどんぐりの木を枯らす
近年、「ナラ枯れ」が急速に広まっている。町田市内各所の公園も、ブナ科のコナラやクヌギなどの根本付近にたくさんの小さな穴が空けられて、粉が吹き出していたり、樹液が出ていたり。私が芹ヶ谷公園で見つけたのは去年の秋だったが、その頃は薬剤等の処置もされていなかったが、1年経って同じ木を見に行くと根本付近から目線の高さくらいまでラップがぐるぐる巻かれていた。慌てて対策を講じたようだが、もはや手遅れではないかと思われる。ナラ枯れを起こす原因はカシノナガキクイムシという小さな昆虫だが、直接キクイムシが木を食べるわけではなく、卵と共にナラ菌の胞子を植え付けて、ナラ菌が木の栄養を吸って育ち、幼虫はそれを食べて育つ。成虫になると体に胞子を付けて別のどんぐりの木に飛んでいき穴を空けて胞子の植え付けと産卵をする。なんと巧みな技だろう。
かつてナラ枯れは西日本だけで見られたが爆発的な被害はなかった。北上して関東に達したのは間違いなく温暖化のせいで、カシノナガキクイムシは温暖な気候を好む。これに拍車をかけたのが都会での木炭使用の急激な減少だ。カシノナガキクイムシはどんぐり(特にブナ科)の木の大木に産卵する。雑木林にどんぐりの木の大木、つまり老木が増えたのは木炭の材料となるクヌギやコナラの木を伐採せずに放置したからで、頻繁に伐採していれば雑木林は若木だけで形成されるから、キクイムシが好む大木にはなりにくい。つまり公園の大木は倒れたら危険だから処置するが、そうでない雑木林は大木が増え、キクイムシの産卵場所が増えるということ。
結論はタイトルにあるように、ナラ枯れの主な原因は2つ。木炭を使わなくなったこと、そして地球の環境破壊による温暖化。台風、豪雨、酷暑、珊瑚の白化、そしてカシノナガキクイムシの北上。つまりナラ枯れの原因は人間。
ところが、危険につき伐採された大木には、縞模様が鮮やかな多孔菌類のカワラタケやヒラフスベ、キクラゲやハナビラニカワタケが発生する。先日ハナビラニカワタケが採れた。味噌汁やうどんに入れて食感を楽しんでいる。考えてみればキノコも胞子が成長する菌類。ナラ菌も菌類。どんぐりの木で育った菌類を食べているのだから、カシノナガキクイムシと人間の私、皮肉な共通点。
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