町田 コラム
公開日:2022.12.08
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の114
小山田のとある暗い湿地に、伐採された木が沈み込んでいる場所がある。毎年10月下旬から11月初旬、おびただしい数のナラタケ=写真右と左上=が発生する。ナラタケはとても美味しいキノコだが、生食は毒だし軸の部分は食べすぎるとお腹を壊すこともある。かつてコウタケの半生食で辛いめに遭った私は、食べ方によっては危ないキノコについて観察するだけに留めている。ナラタケは数種あるとされているが、写真のものはごくノーマルなナラタケ。上から見るとニガクリタケにも似るが、少しだけかじって苦くなく、軸にツバが付いていれば間違えることはない。毎年発生するといってもいつか生えなくなる。というのも、ナラタケは枯れ木どころか生きている立ち木にも寄生して、幹の養分を吸収して枯らしてしまうキノコだから、シイタケの榾木(ほだぎ)同様に養分がなくなれば出なくなってしまう。またはナラタケ病と呼ばれるくらいに森林を枯らしてしまうこともある獰猛な一面も持つ。
一般的にキノコといえば傘がある子実体のことを指すが、実はスーパーなどで売られているキノコ類は全て子実体で、胞子を散布するための一部分にすぎず、本体は木や土の中にある繊維状の菌糸だ。ナラタケは大木を枯らすほどに菌糸を張り巡らせて、幹の内側を空洞にしてしまう、言わばかなり大きな生物と言えないこともない。当然のことながら、子実体を全て剥ぎ取っても本体は死なない。まるで撤退しても大量の地雷を残して行った某国のよう。さらにパイプラインを遮断し、原発を占拠し、発電施設を破壊し、冬に向けてじわじわとウクライナという国の幹を枯渇させようという手法。戦争は地下に潜ってしまっても恐ろしい。非難する国、傍観する国、共生する国と、うまくつきあわないと経済が回らない我が国の未来はどうなる。
近くで採れた安全なアカモミタケ=写真左中段=を持ち帰り、パスタの具にしたら独特の色合いが綺麗で実に美味しかった=写真左下段。まだまだ危機感の薄い日本で、私のお気楽な日常のひとコマ。
だが対岸の火事と傍観していられない日は迫っているのかもしれない。400年に一度という惑星食と月食を見上げて、広大な宇宙の塵のような地球、そしてさらに人類、そして自分というちっぽけな人間がいるという感慨にふけるのもいいが、400年前は不吉な前兆として捉えていたに違いない。地球環境、戦争、核の脅威と不吉なことばかり。人類は400年後、心穏やかに赤い月を見上げているだろうか。
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