町田 コラム
公開日:2023.01.12
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の117
昨秋も川向こうのお寺さんから果肉付きの銀杏を3キロほどいただいた。早速大き目のバケツに入れて水を張り、ドリルで攪拌し果肉と種を分離させる。後は乾燥させて大好物の出来上がり。いただく時には茶封筒に入れてレンジで1分ほどチン。何個か爆ぜたら食べ頃サイン。分厚い湯呑み茶碗の糸底で割ながら一冬かけて食べていく。
高校時代、隣の席は市内寺院の娘だった。3年間神社の息子とお寺の娘は席を並べていた。卒業して数年後、その娘は相模原の寺院に嫁いだ。私は父を継いで神職になった。そのお寺は私のところから都県境の境橋を渡って100メートルほどで、徒歩でも数分。つまり互いに孫がいる歳になったが、依然としてお隣りさん。毎年境内の銀杏を拾い集めて届けてくれる。私はお返しに自作の梅干しを渡し、銀杏と梅干、食べる部位こそ違うが、果肉付きの種を交換する初冬の恒例となっている。不思議な縁だ。
秋を彩る代表格のイチョウ。耐寒性耐暑性ともに強く、虫の食害もなく、病気にも強い。また、根元から切り倒しても根から新芽を吹き出す生命力もある。よって原始の姿のまま現代に至っている数少ない植物だ。さらに耐火性にも優れているため、火災が多かった東京には延焼を防ぐためのイチョウ並木が多い。同様に寺社仏閣にもイチョウが多いのは防火が目的だ。
当社の境内にも何本かある。かつては巨木もあったが、落ち葉は乾きにくく燃えにくく、掃除をするにもとても重たい。周辺の道路に積もればスリップ事故の原因にもなる。また、晩秋には銀杏が落ちて七五三祝いの子どもの着物に当たったり、草履で踏んでしまったり困りもの。やむなく実をつける雌株は全て伐採してしまった。残っているのは雄株ばかりだが、毎年秋ごろは黄色く色づいた葉を愛でる人も少なくない。
そう、イチョウは雌雄異株。その受粉方法は太古から変わらない。まず雄株の穂から花粉が飛ぶ。雌株のめしべのような部分に到達し、専用の格納スペースに収められる。一定期間保管すると花粉から精子が出てめしべ部分へ1つだけたどり着いて結合する。それがあの臭い実となる。めしべのような部分は2本1組になっているため、銀杏の実も2個ずつなる。
樹齢は千年を超えるらしいが、日本に伝わったのが西暦1100年前後と言われているから、国内では樹齢900年の木が最高齢だろうか。ちなみに鎌倉の荏柄天神社のイチョウは樹齢900年と聞く。その他、国内には樹齢800〜900年の大木がたくさん残っている。やはり火災や病気に強いことがうかがえる。
新型コロナウイルスが次々に変異するのを目の当たりにしてきた3年間。動植物に悪影響を及ぼすウイルスや細菌は寄生することで生き、そのために様々に変異を続けてきたはず。イチョウは太古からそれらに負けることなく、そのままの生態を維持してきている。ここ数年でやられっぱなしの人間よりよっぽど強いじゃないか。あいにく当社には御神木と言われるほどの大イチョウはないが、立派な大イチョウに教えを乞いたいものだ。
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