町田 コラム
公開日:2023.02.23
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の119
立春後の初午(はつうま)、または12日後の二の午(にのうま)に稲荷祭を奉仕する。境内の稲荷社や近隣の稲荷社の式で飛び回る。それでも、かつては神職二名で手分けして回っていたが、個人商店や住宅の稲荷社がなくなり、百貨店や商店会、老人ホームや会社など、件数は半分以下になっている。商店街に居住している人がほとんどいなくなったのだから仕方がない。住居の建て替えに伴って神棚をやめてしまうところが多いのも、世代の移行と信仰の在り方の変化なのだろう。何かを叶えてくれるとか、何かから守ってくれるとかではなくて、神様は近くにいらっしゃるというだけで安心させてくれるものなのだが。
近年、祭式に使用する榊を真榊(マサカキ)にして久しい。かつては使い勝手がよかったこともあり姫榊(ヒサカキ)を多用していた。どちらも梅雨からたくさんの花をつけ、初冬には黒紫の実になるが、葉が厚くて花も大きなマサカキは実も大きい。しかもつぶれると紫の果肉の汁は厄介だ。しかしたわわに実のつく頃でも神社では使わなくてはならないから、軍手にビニールの手袋をはめて葉の元の実をつぶさないように落とす作業を強いられる。以前素手でやったら翌日も全ての指先が紫色に染まっていた。
ところが、昨年暮れに正月用の榊の準備にとりかかったところ、マサカキの実が概ね落ちるか、残っていてもつぶれて小さく固まっていた。重装備したのに拍子抜け。季節がおかしくなっているのか、汚れなくて助かる反面気味が悪い。こんなところにも季節のずれが微妙に来ているようだ。
今年の冬はちゃんと寒いように思うが、境内の梅は全体に10日ほど早い。毎年じわじわ早くなっているように感じる。戦争なんかしてる場合じゃない。早くやめて地球の治療をしなくては、日本の四季が壊れて、草木や虫の生態系も変化する。きれいな空、きれいな水、きれいな空気が思い出だけになってしまうかもしれない。高度成長期に環境のことなど考えもせず、今と比べたら相当乱暴な生活をしてきた世代の私だから、偉そうなことは言えないが。
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