町田 コラム
公開日:2023.03.16
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の121
これも近年の暖冬のせいだろうか。冬には枯れてしまうイカリソウが鮮やかな色になって残っていた。一括りで紅葉と呼ぶが、正確には紅葉・黄葉、褐葉に分けられる。このイカリソウはそれがすべて混じってアート作品のようだ。大抵のイカリソウは冬になると枯れてひげ根が密な浅い根が越冬し、春には若葉が顔を出し、葉の茎とは別に花の茎がすぐに追いかけるように吹き出す。茎は三叉に分かれてそれぞれ3枚ずつハート型の葉をつけるから、三枝九葉草(さんしくようそう)という別名もある。見た目の通り和船の錨に似ているから日本ではイカリソウと名付けられたが、中国名は淫羊藿(いんようかく)で、これを食べた羊が精力絶倫になったという伝説があることから名付けられた。確かに古くから漢方薬、生薬として利用されており、バイアグラと同じ作用を持つ成分も含まれているが、微量過ぎて効果のほどは定かではない。主に滋養強壮、腰痛、冷え性などに効くとして用いられている。
以前は原町田近隣の林内にもごく普通にあって、おそらくマニアの仕業かと思うが、毎年出るところから忽然となくなってしまうこともしばしば。ごく当たり前にあった里山の草花が、人によって消えていくのは嘆かわしい。黄色やピンクなどの品種もあって、密かな人気があるイカリソウ。野生種も背丈は40〜50センチくらいと小さく、花も葉もかわいらしいからこそ狙われたに違いない。もっと地味な花にしておけばよかったのに。
地震に対する意識の高い日本国民だが、今回のトルコ・シリア地震には驚いた。同様に地震の多い国でありながら、がれきと化した地域の悲惨さ。耐震建築対策などないのか。さらに支援活動もままならないほどに暴動や強奪が頻発。それに比べれば、野草をこっそり盗むなんてことはささいなことと思いがちだが、見方を変えれば、平和な国の恥ずかしい汚点と言える。被災して生きるために食料を奪うしかないのだとしたら、犯罪だが仕方がないという見方ができないこともないが、趣味で野草を盗むことは、生きる事に無関係な、お気楽かつ不必要な行為だ。あまりにせこい。親父ギャグで言えば「怒りそう」だ。
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