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町田 コラム

公開日:2023.04.06

町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の123

  • 山桜(上段)と富士桜(下段)

投下

 私を樹木に例えると樹齢64年。まだまだ若い。当社境内の参道両脇にそびえる楠は、成長が早いから御神木と勘違いする人が多いが、ほぼ私と同い年くらい。大宰府天満宮にある樹齢1500年の楠に比べたら、若者どころか子どもだ。

 世間が桜で大賑わいの時期、必ずおいでになる人たち。「なんだ、桜がないじゃん」。神社には桜があるというイメージでやってくる人たちだ。御祭神菅原道真公のお好きな梅はたくさんあるが、残念ながら当社には花見が楽しめるような桜の大木はない。ただし皆無ではない。小さな富士桜=写真下=と山桜=写真上=がある。山桜の樹齢は6年。そう、6年前に突然生えていた。明らかに鳥爆弾。おそらくヒヨドリかキジバトあたりだろう。背丈は2mほどで、去年あたりから少しずつ花数を増やしている。

 サクランボというと、あの甘酸っぱい大きな果実と連想するが、桜も同じ仲間だから小さくともサクランボは実る。ソメイヨシノは種で発芽することはないが、大き目のアズキくらいの実をつける。黒くなってきたら食べ頃だ。山桜は鳥が好んで食べ、消化できない種は糞と共に落とされる。当社の山桜は7年前に鳥が投下して、運よく発芽したというわけだ。それがついに花をつけ、私をわくわくさせている。やがて見上げるほどになって、多くの人を和ませる桜になるかもしれない。無論その頃に私はいないが、私の遺伝子は引き継がれているから、未来の事とはいえ、その時の感じを何となく予感できる気がする。願わくば何事もなく育ってほしい。決して他国の戦争に日本が巻き込まれて、戦禍で焼けないでほしい。スポーツだけ見ていると、世界が共存できないことが不思議に思えるが、今はそのスポーツが世界の不協和音の目隠しになっている。鳥が糞と共に種を投下する様子と、航空機が爆弾を投下する様子は似て非なるもの。命が生まれる種と命を奪う兵器。あえて比べるものでもない。日本の歴史だけでも、戦国時代という領地の奪い合い、殺し合いの歴史があって、信長、秀吉、家康を筆頭に数々の名だたる武将がドラマや映画、アニメにまでなって、長く国民の人気を博している。だが常に歴史の陰に巻き込まれた民衆がいた。人は戦いが好きなのか。スポーツやゲームだけでは飽き足らないのか。人間という同族でありながら、外見や個性の違いで区別したがる生き物なのか。

 山桜が御神木と呼ばれるほどの大樹になる頃には、世界が一つにまとまっていてほしい。

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