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町田 コラム

公開日:2023.08.17

宮司の徒然 其の130町田天満宮 宮司 池田泉

安住

 クチナシの木の周囲をせわしく飛び回るオオスカシバが、時折ピタッと定位しては、太いお尻を葉の方へ曲げる。また飛び回っては時折この行動を繰り返す。写真(右端)でも分かるように、高速で羽ばたいている羽根は見えない。どこにも掴まっていないのに停止しているのを定位(ホバリング)と呼び、ハチドリならまだしも、蛾がしているとは驚きだ。こうしてオオスカシバは定位しながら一つずつ産卵していく。孵化した幼虫(写真中央)は好物のクチナシの葉を食べて7〜8センチくらいまで成長する。これでクチナシの味を記憶し、成虫になっても忘れずに、卵をクチナシの木に産みにくる。なんてすごい能力だろう。

 キアゲハはアシタバが好きなようだ。我が家のアシタバはキアゲハの幼虫のレストラン状態となっている(写真左)。しかも鳥の糞に擬態している産まれて間もない幼虫や、すっかり大きくなって着飾っている終齢幼虫もいるから、おそらく長い日数をかけて何度も産卵に訪れていたのだろう。

 蝶や蛾はそれぞれに食草に違いがあって、爆発的に増えれば食草が不足して自滅してしまうから、適度な数しか産卵しない。そうして食草と共存しバランスを保ってきた。ただし時には、かつてのアメリカシロヒトリのように爆発的に増えて、桜の木を裸にしてしまったり、南米や東アフリカのサバクトビバッタは大きな群れで農作物などを食い荒らしてしまう。それがバランスだとすれば、あまりにも植物には酷だ。幸い日本にサバクトビバッタはまだ発生していないが、このまま温暖化が進むと有り得ないことではない。それを証明するかのように、報道されなくなったから落ち着いたのかと思っていたヒアリは、西日本を中心に全国各地で見つかっていて、どうやら水際対策も限界になっているのかもしれない。

 コロナが落ち着いたかのように動き出した社会。海外から遥々海を渡って来るコンテナに紛れて、様々な生き物、様々な植物の種がやって来ては、水際対策をかいくぐり、定住できる場所へと広がってゆく。防御態勢、受け入れ態勢のない在来生物や在来植物は脆弱。人間のみならず、狭い島国の生き物は住処を侵されていく。得体の知れている外国人旅行者でさえ、急激に入ってくればオーバーツーリズムを招く。外国人旅行者が多すぎて、地元住民がバスや電車に乗れない事態になっている京都や鎌倉。人間も生物もバランスが重要。

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